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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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店員さんに言うべきか…言わぬべきか…。

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この前、買い物に行った時にちょっとしたことがあった。
それは百円均一のお店での出来事…。

化粧水を入れるために小さ目のスプレーボトルを探していた。
丁度いいサイズがあったからそれでいいと思って手に取った。
でも他にもあるかもと思い、隣の棚も一応見ていた。

探している物とは違うものがついつい目に入ってしまう。
真新しい物だと余計に気になる。

そんな中、スポイトの三点セットというようなものを見つけた。
小さい袋の中に、小さなじょうごと小さなヘラが入っていた。
どうもそれは小さなボトルに化粧水を入れやすくするための道具のようだ。
でもスポイトセットと表記されているのに、スポイトがない…。
重なって見えないのかと思い、手に取って横から中を覗いてみた。
どうも重なっていない。
同じ物が奥に並んでいるので覗いてみると、そこには分かり易くスポイトの存在があった。
まさかっ?!と思った私は袋の裏を見た。
裏の剥がして開けるところがグチャグチャになっている!!
盗られたんだ~と思った私は、一応念のため三点が入っている袋の裏を見た。
綺麗でシワもない。
でもスポイトを盗られたであろう袋の裏は、指で触った後らしきものも糊の部分に付いている。
私は警察ではないのでこの答えが正しいかは分からないが、私の中では一目瞭然の差だった。
すぐにそれを店員さんのところへと思ったが、行こうとした私に上(神様)が、
『持って行って、あいちゃん(仮名;私)を疑ったらどうしますか?』
と問われた。
そっか~と思った私はそれを棚に戻した。
この前そんな感じのニュースをネットで見たなぁ~と思い出した。
商品の袋が破れていると善意で申し出た人が、店員さんに疑われ悪意と取られてしまった話だった。
そういうことが世の中では起きているということだ。
警察沙汰にまでした店員さんは、結局は防犯カメラを見て申し出た人ではないと分かったようだが、疑われた方はたまったもんじゃないと思う。
そんなことを思い出した。

でも、糊の部分に付いてる指紋は私のではないから、そこは一応言える部分だと私は思った。
防犯カメラが何処まで写っているかは分からないけど、私は意を決した。

これをこのままにしていたら、知らないままに買ってしまった誰かは悲しむかもしれない…。
そう思った私はまたそれを手に取った。
そしてさっきから大きな声を出して元気に走り回ってる店員さんがいたので、この人なら大丈夫と思った私は、丁度私の棚の裏側でお客さんの探しものをしていたので、それが終わるまで待ってそして声をかけた。
『すみません、この中のスポイト盗られてます。』
と私は言った。
すると大きな声で、
『あ~(とショックを受け)、ありがとうございます。』
と言われ、店員さんは袋を受け取り去って行った。
何も言われなかった…良かった~。
上が、
『良い行いですね。』
と言った。
さっきはあんなことを言っておいて、事が過ぎたらこうなのだ。
神様ってそんな程度で良いのだろうかと私は疑う。

そして自分の買いたいものをレジで済ませると私はふと思った。
どうしてスポイト…?!…と。
すると上が、
『ねぇ~。あれだけどうしてかねぇ~。』
と言う。
私も肯いて本当に何でだろう…、どうしてもあれだけが欲しかったのかも…と思った。
上が、
『本当にねぇ~、あれだけどうしても欲しかったのでしょうねあの女の子は…。』
と言ったから、私は驚いて、もちろん声には出さずに心で驚いたけど、目は見開いてたかも…。
女の子~!!と驚いていたら、いつも見えるところに女の子が薄っすらだけど見えた…。
この子~?!と思ったら、上が、
『そうそう、この女の子。どうしても欲しかったのでしょう。この子はいつもいつも盗るから、欲しい物がたくさんあるんですね。』
と淡々と言った。
全部見られてるわ~。
知ったらみんな驚くだろうなぁ~と思ってたら、上に、
『ええ、みんな驚きますよ。回数まで私言いますからね。ウソを付いた回数だって分かりますよ。後で、どうなるかはお楽しみですよ。一人一人答えは違いますからね。』
とまた淡々と言った。
怖いけど、私ももう慣れてしまった。
すぐに怖くなくなる。
そんなものだ、仕方がない…と思って終わる。
こんな風にたまに教えてもらう。
私はのんきに楽しんでいる。

そして彼氏にこの話をしたら、
『そのスポイトセット欲しい。今度買っておいて。ずっとスポイトが欲しいと思ってたから…。』
と言われた。
私は未然に悲しむかもしれなかった人を救ったんだから、そこを褒めてくれるもんだと思っていたのに…。
イヤ待てよ…。
もし先に彼氏にスポイトが欲しいと言われてたら、私がそのスポイトセットを買っていたかもしれないのかぁ~!!
なんやかんやで恐ろしや~。

じゃあ、あの時私が上に、
『悪魔なんじゃなかろうか…。人を陥れようと企んでるんじゃなかろうか…。』
とかその他暴言を吐いてしまったことはどうしよ~!!
だからと言って上からお叱りの言葉が降ってくるわけでもなく、変わらず淡々とした毎日を過ごしている。

彼氏も今は慣れてしまい、上の話は流すように聞く。
それも当たり前になって、上も、“よいよい。”と言う。

こんな風に買い物に行く時も神様は近くにいるようで、大事な時にそっと何か企みながら?!私に言って来る。
そして上に、
『普通はね、こんなこと私が直接言わなくてもみんな先を読んで行動するの。だからと言って完璧になるわけでもないの。でも世の中の人はみんなこうやって生きているの。あいちゃんは考えが甘いから、見ていてハラハラします。』
と小言?!が届いた。