小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

くじ引き

INDEX|1ページ/1ページ|

 
地元で鮭のつかみ取り大会が行われた。

大学で知り合った青森出身の彼と遠距離恋愛の末結婚。
結婚後、彼の地元に移り住んだ。
その彼が、

「詩織は体験したことないだろう?」

と、連れてきてくれたのだ。
鮭のつかみ取りどころか、釣りにだって行ったことない。

手渡された長靴を履いて、厚手の手袋嵌めて、冷たい川の中へ入り込む。
子供達が回りで、キャーキャー言いながら、鮭を追いかけている。
私は足元に群がる鮭に、どう対処して良いか分からない。
困惑していると、彼が横にやってきて、

「ほらよっ!」

と、一気に掴んで、見事に鮭をつかみ上げた。
掴み取った鮭はもって帰って良いことになっている。

「これでしばらく晩御飯のおかずには困らないな」

と、彼が笑った。
え、丸ごと持ってかえるの?私、お魚さばいた事ないんですけど…。

「大丈夫だって。俺がさばいてやるよ」

と、ウィンクする。
自然と直接触れ合ったことのない都会っ子の私には、こういうことには慣れてない。
でも、彼は別に馬鹿にするでもなく、ゆっくりと手を引いて私を引っ張ってくれていってくれる。

あちこちで炊いてある焚き火に当たりながら、大会上で行われているくじ懸賞の結果を待っている。
このくじに当たれば、北海道往復旅行券がもらえるのだ。


「はい、次の番号は、28344!28344 です!!
当たった方、いらっしゃいますかー!?」

マイクを通して、女性の司会者が大会場に呼びかける。
残念そうな声があちこちで聞こえる。

「…えー、当選者の方がいらっしゃらないようですので、次のくじを引きますー!
はい、次の番号は、38886!38886 です!!」
「俺だー!!」

彼が隣で大声を上げた。
え、あ、当たったの!?
走って、ステージへ向かう彼。

「当選、おめでとうございますー!お名前をお聞かせ願いますかー?」
「杉野 明です!!」

『新婚さんだベー!!』

会場のどこからか声がかかる。

「えー、新婚さんなんですかー?奥様はどこに?」
「あそこで、焚き火に当たってるべ」

と、彼が私を指差す。
一斉にみんなの目が私に向けられる。
あはははは…
引きつった笑いを浮かべながら、遠慮がちに手を振った。

彼が手にしている北海道往復旅行券。
もうすぐ雪祭りが始まるから、それを見に行こうか?
と、彼が言った。
北海道とはまったく反対方向に実家のある私。
北海道なんて行ったことないし、雪祭りなんてそれこそ夢のまた夢だった。
「行く!行く!!」
子供みたいにはしゃいで、抱きついて、そしてキスをした。
作品名:くじ引き 作家名:moon