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佐崎 三郎
佐崎 三郎
novelistID. 27916
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『白い詩 あるいは白の死』

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「白い詩 あるいは白の死」

神経的なものなのか胃がキリキリと痛む
なので真っ白いミルクにしてみる
真っ白いテーブルで真っ白いカップで
真っ白のミルクを眺めている
真っ白と言ってはいるがそれぞれが違う真っ白で
何が真っ白なかと考えながら眺めていると
ますます胃が痛む
原因はあるだろうがそれはいいでしょう
訳の分からない原因もあれば
これが犯人という原因もある
あいつは’白’だあいつは’黒’だと追いかけても
胃のきりきりは静かに生きてる
白にもいろいろあれば黒にもいろいろある
眺めているだけでは仕方がないので
ミルクを唇に浸してみると
温くなって膜がはってそのうえ
唇から顎にかけて膜が張り付いて
それはもう真っ白な膜が


なにやら頭の中も真っ白で
なにもかもがぐちゃぐちゃにこんがらがって
考えられない
これは白というよりも黒か
自分の生の胃袋を見たことはないが
内壁のどこかが痛がっているのだろう
以前真っ白いバリウムを何度かのんだことがある
すると胃が膨らんでレントゲンがきれいに撮れる
数時間後にはまた真っ白いものが出てくる
真っ白の胃がいま頭の中にある
真っ白の胃がいま頭の中にある
消化不良のなにかが胃にある
消化不良のなにかが胃にある
雪の中の白兎
雪の中の白兎
真っ白い胃の中に真っ白いミルクで満たされ消化不良
真っ白い胃の中で真っ白いミルクで満たされ消化不良
飲み干したカップの底には
なにもなかった
空っぽである
きりきりと訴える胃は
それでも空っぽのまま
さりげない白い死を迎えた