黒太子エドワードⅠ
プロローグ
「黒光りがする鎧をいつも身に着けていた」からなのか、その残虐性故からか、「黒太子(こくたいし)」と呼ばれるようになったイングランドの王太子、エドワード。彼は、エドワード3世の長男として、その将来を期待されたが、46歳で早逝している。
プライベートでは、同じ宮廷で幼い頃を過ごしたジョアンと彼女が二度の結婚歴があるにも関わらず、周囲の反対を押し切って結婚している。なかなか情に篤く、誠実な青年だったのかもしれない。
その彼の父で、結局息子より長生きしてしまったエドワード3世はというと、正妻のフィリッパ・オブ・エノーとの間に七人もの子供をもうけるも、晩年は若い愛人に入れ込んでいたらしいので、親子といえど、性格はかなり異なっていたらしい。
もっとも、彼の場合は、一五歳の時(一三二七年)母イザベルの愛人であったマーチ伯ロジャー・モーティマーに父親が廃位されるという、とんでもないことが起こったので、多少屈折するなりしてもおかしくなかったのかもしれないが。