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正常な世界にて

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【第19章】



 ――その年の春、私は栄のとある薬局の前にいた。学校帰りに、クリニックと薬局に寄ったのだ。
「よいしょ」
受け取ったばかりの薬を、通学カバンに押し込む私。今回処方された分は以前よりも多いため、カバンの中が窮屈気味だった。なんとか押し込み、チャックをしめる。
 今回処方された薬の分で、変更があったのはストラテラだ。一日40ミリグラム1錠だったのが、2錠に倍増した。効果次第で、まだ増えるのかな? とりあえず、副作用も含め、様子見することになっている。

 エレベーターに乗り、ビルの1階へ降りる。門限まで時間が少しあるので、近くのラシックに寄ろう。
「優遇するな! 平等に扱え!」
ドアが開いた途端、拡声器の大声がやかましく聞こえてきた……。どうやら、久屋大通公園のほうで、何かの抗議デモをやっているらしい。
 ビルを出たところで、道路を挟んで向かい側に、そのデモ隊がいることに気がついた。私がこのビルに入った後で、そこに集結したんだろう。
「障害者を優遇するな!」
その大声を聞き、デモ隊が掲げる看板の文字を読み、私はそのデモ隊が、噂の反障害者デモ隊だと気がついた……。ネットで最近話題になっているのだ。
「平等に扱え!」
反障害者デモ隊は、よほど実生活でうまくいかない事があるのか、障害者が受けられる優遇措置が気に入らないようだ。私個人としては、理解の面での不十分さがあると思う。

 私は歩道に立ち、そのデモ隊を眺める。あの人たちがこれから何を始めるのかが、つい気になったのだ。とはいえ、私自身が障害者だと察知されないようには、十分気をつけないといけない……。
「みんな行くぞ!」
デモ隊のリーダーらしき中年男性が、目の前の道路を堂々と歩き始めた。もちろん、車はクラクションを鳴らす。しかし、男はそのまま歩き続ける。それに続く形で、デモ隊は道路を歩き始めた。クラクションが何度も鳴り響く。デモ隊は、勇気というか無謀な連中らしい。
 反障害者デモ隊は、道路を占拠する形で行進を始めた。道路規制も無いので、無届けの行進なのは明白だ。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん