キセキ
いろんなものが通り過ぎて行く
標識、家、車、人、馬、人力車
生きていると
いろんなものが通り過ぎて行く
常識、町、星、友人、恋人、親
いろんなものが僕を通り過ぎて
遥か彼方へ見えなくなって行く
それは時間と共に動いていれば
仕方の無い事
仕方の無い事
皆歩く速度も持っている時計も
カップ麺を待つ時間さえちがう
旅に出る時や、引っ越しする時
何を持って何を置いて行くのか
人によって大切なものもちがう
同じ歩幅で同じ速度で同じ方向
そんな偶然はなかなか起らない
3億円事件やロッキード事件
過疎化の村にジュリアナ東京
あの日の恋人にいつかの友人
めったに話す事の無かった父
歩いていると
いろんなものが通り過ぎて行く
それでも、16000日も歩き続けていると
ちょっとした奇跡が起きたりするものだ
ふと隣を見ると
同じスピードで
誰か歩いている
そんな偶然を
人は未来と呼んだり希望と呼んだり恋と呼んだり
僕は
それをやっぱり奇跡と呼ぶだろう
手を伸ばせば届く距離に誰かいて
その人が僕にとって特別な存在で
同じ道を同じ速度で微笑みながら
光さす明日に向かって歩いている
それを奇跡と呼ばずに何と呼ぼう
どしゃ降りの月曜日
どんより曇った火曜日
残暑厳しい水曜日
よく晴れた木曜日
初雪の金曜日
満月の土曜日
清々しい朝の日曜日
長く歩いていると
偶然誰かと並んで歩く
そんな奇跡がある事を
僕は知っている