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ネコネココネコ

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休みを利用して東京に行った。
東京には、高校時代の友達が結婚して住んでいる。
久しぶりだから、会おう!と言うことになった。
地下鉄の駅で待ち合わせ。
慣れない東京の人ごみにドキドキしていると、改札口から彼女が出てきた。
相変わらず、華奢な子だ。
ホテルでランチを食べながら積もり積もった話に花を咲かせる。

ホテルを出て、その辺りをぶらぶらした後、彼女の家へと向かった。
一軒家の貸家。
でも、近代的なつくりではなく、昭和の匂いが漂う雰囲気の家。
すごく落ち着いた環境にある。

彼女は、子供がいない代わりに、2匹の猫を飼っていた。
まだ子猫で、すごくかわいい。
家の隣の駐車場に捨てられていたのを拾ってきたのだそうだ。
私はどちらかというと、犬人間なのだが、手に持っている猫じゃらしにじゃれてくる子猫を見ると『猫も良いな』、と思ってしまった。

私は、動物病院で看護師をしている。
取り扱うのは、犬・猫が殆ど。
犬は子供の頃からずっと飼ってきているので扱いには慣れている。
だが、猫は慣れたと言っても、やっぱ怖い。
「フーッ!!」 と、背中の毛を逆立てられると、一瞬怖気づいてしまう。

そんな中にも、何をしてもゆったりと構えた猫達がやっぱりいるものなのだ。
家族で飼っている猫達、総勢で9匹、という飼い主さんがいる。
どの猫も不思議なくらいおとなしいのだ。
考えてみたら、この家族、母親と娘二人なのだが、3人ともすごく穏やかな性格。
やっぱり飼い主の飼い方によって、猫の性格も違ってくるのだろうか。
私の友達も、ふんわりとした雰囲気の子だ。

あるとき、9匹猫のお母さんに

「お母さんの猫ちゃん達、みんなおとなしいですよねー。手がつけられない猫がたくさんいるから、この猫ちゃんたちが来ると、ほっとします」

と言った。
お母さん、びっくりした顔で

「あら、そうなの?」

話を詳しく聞いたら、この猫ちゃんたちのうち6匹は駐車場に捨てられていたらしい。
まだ生まれて間もない頃だったみたいだから、哺乳瓶で育てたと。

「この子達も私のかわいい子供達だから」

と、お母さんは優しく微笑みながら言った。




ある時、同僚がうちの動物病院の隣で経営しているお店の人から、嫌な話を聞いたと言ってきた。
朝、そのお店の人が業務用の大きなゴミ箱の傍を通ったとき、子猫の鳴き声が聞こえたようだったと。
ゴミ箱の中はごみでいっぱい。だから生ごみを掻き分けるわけにも行かず、気になったがそのまま出勤してきたと。
で、たまたま同僚と駐車場で会ったので、この事を話してきたのだ。
同僚はすぐにそのゴミ箱のところに行ったが、既にごみは収集された後だったらしい。
すぐに動物愛護センターに連絡をして、ゴミ箱の場所と、日時を知らせた。

動物愛護センターからは連絡はない。
子猫が本当にいたのか分からない。
もしいたとしたら、私の友達や9匹猫のお母さんのような優しい人に飼われることを祈っている。
作品名:ネコネココネコ 作家名:moon