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私はおばちゃんにキリストが現れた話をしていた。
そして上が現れたのでその話もしようと思っていた。

勉強を始める前におばちゃんが、
『先週の話にキリストが見えたとか言っていましたが、その後どうなりましたか？』
と聞いてきた。
こちらから話を出さなくてもすんだのでありがたかった。
『はい、変わらず仕事をしています。雲の端っこに立って、手を動かしながら人間に霊的食物を送っています。』
と私は笑顔で答えた。
おばちゃんはつまらなそうな顔をして、
『あっ、そうですか。まだ見えるのですね。』
と言った。
私は大きく返事をし、
『キリストは優しいんですね。本当に人のために贖いをして、今でも人のために何かをしているんですね。』
と私はおばちゃんたちの言葉を使ってそう言った。
なのに、
『キリストの贖いについてはとても喜ぶことですが、その贖いについては私はまだあなたにお教えしてはいません。キリストについてもまだ全てをお教えしていません。ですから私たちのようになっていないので、キリストについてあなたは勉強してもいないので、キリストについてあなたは話せないのですね。なので、あなたの見ている何かは悪霊があなたに見せているということになりますね。私たちの中に、そのようなことになっている人はいないので、悪霊の仕業だと分かりますね。』
と冷たく淡々と時には笑顔でそう言われた。
『では、今キリストは何をしているんですか？！』
と私は聞いた。
おばちゃんの表情がパァ～っと輝いて、
『今は何をしているのでしょうかねぇ～。神の右に座しておられるのですね。』
とその先を教えてはくれない。
私は肯いて、
『右に座してるんですね！！神の右にいて何をしているんですか？！』
と聞いた。
『神の助けをしているんだと思いますよ。きっとそうだと思いますよ。私はそう信じています。』
とおばちゃんは輝いたままそう言った。
『どんなことを助けてるんですか？！』
と聞いたら、
『ねぇ～、どんなことを助けてらっしゃるんでしょうかね。』
と宙を見上げてそう答えた。
私は答えを知りたいので、私の見えている何かが何者なのかを知りたいので、
『はい、そう思います。どんなことをしてるんですか？！教えてください。』
と私はここまで言った。
すると宙を見上げていたおばちゃんの顔が、ストーンと落ちておばちゃんの鞄に向くと無表情で、
『知りませんよ、そんなこと。』
とサラッと言った。
私の表情が固まった。
その表情はおばちゃんには見られてなかったから良かった。
『でも、人のためには働いているんですよね？！』
とおばちゃんの背中に向かって言った。
『分かりません。でもそうであると私は望んでますけどね…。』
と希望的観測？！を述べられた。
私は首を傾げた。
キリストも首を傾げた。
上は椅子に座ったままで、またあの怒り顔をしていた。
怖いよ～。
『それで、キリストだけじゃなくて神様も見えました。おばちゃんたちはこの人のことを知ってるんですね。』
と私は褒めたつもりだった。
おばちゃんはこっちを向いているけど、その反応は声ではなく後ろに反り返って目を見開いていた。
何も言わないので、
『神について証す人はこんなことになってたんですね！！キリストについて証すものではなくて、神様について話せるんですね！！』
と言うと、おばちゃんは表情を元に戻し冷静に、
『いいえ、違います。そのようなことにはなっていません。神を見た者はいませんからね。』
とあしらわれた。
『お母さんにどんな姿かを聞かれたので、椅子に座ってて髪の毛は白髪で長くて年寄りで男の人って伝えたら、お母さんが驚いて、“聖書に書いてある！！”って言われて、その場所を読んだらその姿の人でした。なので、聖書を書いた人が見ているので、神を見た人はいるんですね。』
と言うと、おばちゃんは笑顔になって、
『まっ、確かに啓示に神の姿が書かれていますね。』
と嬉しそうに言った。
だから私も嬉しくなって、
『はい。だからおばちゃんたちの言っている“神を見たものは一人もいない。”というのは間違いで、“神を見たものはいる”となるっていうことが分かりましたね！！』
とテンションが上ってそう言った。
でもおばちゃんのテンションは一気に覚めて、突き刺さるような表情になり、
『いいえ、間違っていません。神を見たものは一人もいません。』
と言った。
意味が分からなかった。
肯定して否定する…。
上はそんなことしないと言っていた…。
でもおばちゃんはした。
『聖書に書いてあるのに否定していいんですか？！』
と私は聞いた。
『確かに啓示にはそう書かれていますが、でも神を見たものはいないんですね。』
と私から目を逸らしてそう言った。
私は腑に落ちないので、
『聖書に書かれている言葉は神からの言葉ですよね。その言葉を信じなくて否定していいんですか？！』
と私は喰い下がらなかった。
おばちゃんはこっちを見ずに、机の上のノートに目を落としたまま、
『神を見たものはいないので、いいんです。神は許してくれますからね。』
と呟くように言った。
私は怖いけど、上を見た。
やっぱり怒ってる～。
見続けるのは怖いので、私は目を逸らした。
『神様が椅子に座ってこっちを見てるんですけど、怒ってますよ。おばちゃんたちはこの人について証すものなんですよね。』
私は恐る恐るそう言うと、おばちゃんはこっちを見ずに、
『いいえ、違います。あなたが見ているその何かは神ではありません。悪霊の仕業なので、神ではありません。私たちでさえ神を見ていないのですから、私たちではないあなたにそのようなことは起こりません。私たちのようになるのは大変なんです。ですから、それは神ではなくサタンの手下があなたに見せているのです。』
と淡々と言った。
私はお母さんのところで勉強していた時に習った話を思い出したのでそのことをおばちゃんに言った。
『お母さんとの勉強の時に習ったんですけど、“サタンは幻を見せたり人の心を惑わしたりする。”と習いましたが、“サタンは神やキリストを怖がっているので、神やキリストの姿にはなれない。神やキリストの話も出来ない。”と習いました。なので、私が見ているのはサタンがしているわけではないと分かりました。』
と言った。
私の話を聞きながら、おばちゃんの表情は自由自在に変化する。
ニコニコとなったり眉間にシワを寄せたり…いろいろ変化する。
『サタンは邪悪を行います。サタンは神を恐れてはいますが、どんなことでも出来るので神やキリストの姿にだってなれます。人を悪い道へと陥れようと企んでいるのがサタンなので、あなたに神やキリストの姿を見せて、邪悪な世界へと導こうとしているのですね。それを喰い止めるのが私たちの仕事なんですね。あなたを邪悪から守りたいと思っているので、神の霊感で私があなたの元へと来たんだと思いますよ。』
と親身な表情でそう言った。
もう何を言っても平行線だと思った。
同じ宗教なのに同じ日本内なのにどうして答えが違うのか…、サタンは何でも行えるなら神と同等になってしまうと思わないのか…。

結局、この日もこんな感じから始まり、そして勉強へと移って行った。