ある再生
溶けかけの角砂糖。
群がる蟻の子よろしく
女には男が群がった。
角砂糖の目的は
女王蟻に食されること。
蟻の子には興味がない。
女も群がる男に興味はなく、
ただ一人想う相手がいるのだった。
だが、女王蟻にとって
角砂糖はただの餌に過ぎない。
女も相手にとっては
ただの女に過ぎなかった。
女は決意した。
ただの道具に成ろうと。
成り下がるのではない。
女は意志を持って
自らの意志を捨てるのだ。
女王蟻に食べられる女の喜悦。
相手にとり唯一無二の
存在ではないという幸せを
女は感じていた。
「私は道具。
一瞬のための道具。
道具として機能できる悦び。
心が溶けていく。
私を縛っていたものが
解けていく。
これでやっと
私は私になれる…」