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月とコンビニ
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夏恋花火

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シン 「は?なんだよいきなり。俺にもなんか手伝うことが」
親父 「こっからは花火師の仕事だ。手伝えることは何もない。」
シン 「いや、でも」
親父 「見せたい奴がいるんだろ?だったら、そいつと一緒に花火みてこいよ。」
シン 「親父・・・」
親父 「まぁ見とけ。お前が花火師になりたくなるような、すげぇ花火打ち上げてやるからよ。」
シン 「意外と諦め悪りぃな(笑)。」
親父 「まぁ、お前の父親だから」
シン 「だな。サンキュー、親父。」


シーン8
●場所:神社
SE:走る音

シン 「こんばんは。」
女  「あ、こんばんは。久しぶり…ですね。」
シン 「えぇ。この前は一方的に話しちゃってすいませんでした」
女  「いやっ、全然大丈夫よ。それに」
シン 「それに?」
女  「何か嬉しかったし。」
シン 「なら良かった」
女  「あの、私からも改めて謝らせてください」
シン 「はい?」
女  「最初に会ったときに、突然変なこと言ってごめんなさい。私、あの花火が見たくてつい…戸惑ったでしょ?」
シン 「まぁ、多少は…でも、気にしなくて大丈夫ですよ。それよりも今は、花火を楽しみましょうよ。もうすぐ始まるはずですし」
女  「そう・・ですね。あ、なんか今更聞くのも変なんだけど、名前聞いてもいい?」
シン 「そういえばまだ名乗ってませんでしたね。俺はシンっていいます。草冠に心って書いてシンです。」
女  「シン・・・か。そういえば花火に欠かせないものが芯よね」
シン 「たぶん親もそれからつけたんだと思います。あの、一応聞いてもいいですか?」
女  「なに?」
シン 「名前ってあります?」
女  「えーーと・・・花火?」
シン 「そのままじゃないですか」
女  「じゃあ、四尺玉?」
シン 「むしろ苗字っぽいですよそれ。じゃあ今俺が考えます。え~と、四尺の花って書いてヨシカっていうのはどうです?」
女  「ヨシカ…。いいわね!じゃあ今日から私の名前はそれにしようかしら」
シン 「よかったです」

●SE:花火
シン  「おっ!始まった!意外とここの神社っていい眺めなんですね!花火全体が良く見えますよ」
四尺花 「綺麗ね」
シン  「えぇ!」
四尺花 「あれ?意外と楽しんでるのね」
シン  「まぁなんだかんだ花火っ子ですから(笑)」
四尺花 「ふふっ。ありがとうね」
シン  「えっ?なにがですか?」
四尺花 「いろいろと」
シン  「俺は名前考えただけですよ。改まってお礼言われるほど大したことしてませんって。」
四尺花 「それもあるけど、花火の事でいろいろ頑張ってくれたんでしょ?」
シン  「いやいや、俺は何も」
四尺花 「四尺玉。打ち上げられるんですよね?」
シン  「えぇ」
四尺花 「それはシンのおかげなんでしょ?」
シン  「それは・・・俺の親父がほとんどやってくれたから」
四尺花 「それでも、シンがいなかったら実現しなかった。分かるんです・・・何となく。シンが私の為にしてくれたことが。」
シン  「ヨシカさん・・・」
四尺花 「でもね。私も何かシンに恩返ししたい。でも、きっと最後の花火を見たら私はここからいなくなってしまう。だから私…」
シン  「ヨシカさん。大丈夫ですよ。俺はただ、あなたに花火を見せたかっただけですから。」
シン語り:そう。あの時の悲しげな表情を見た時から。俺は決めていた。
シン 「だから、何も迷う必要ありません。そうですねぇ…唯一何かして欲しいとしたら、最後までこうして一緒に花火を見させてください。ってことですかね?」
四尺花 「シン・・・」
シン  「いいですか?」
四尺花 「うん」


シン語り:暫く二人で花火を眺めた。この時間がとても短く、あまりにも儚すぎる時間であると、俺は思ってしまった。そして、花火の打ち上げが止まる。
     ついに、四尺玉が打ち上げられる。

シン  「いよいよ最後か。打ちあがるといいですね」
四尺花 「打ちあがりますよ。絶対に。」
シン  「ですね。」
四尺花 「これが最後の花火。」
シン  「えぇ」
四尺花 「シン」
シン  「なんですか?」
四尺花 「今日は本当にありがとう。シンと花火が見れて本当に楽しかった。」
シン  「俺も、楽しかったですよ」
四尺花 「よかった…本当によかった…」
シン  「あの、ヨシカさん!俺…俺っ…」
●SE:四尺玉
シン語り:花火の音がなる。それは空に向かって高く高く上がっていく。俺はその花火から目を逸らすことが出来なかった。そして、
四尺花 「ありがとう…シン。本当に、本当に・・・ありがとう。あなたに会えて本当に良かった。」
シン語り:夜空に大きな一輪の花が咲き誇った。そして、横を見ると俺の隣には、もう、ヨシカさんの姿はなかった。

シン語り:ヨシカさんは空に還っていった。彼女の魂は報われたのだ。きっと彼女もあんな風に美しい花火だったんだろうな…そんなことを考えながら思い出す。最後に彼女が俺に見せた表情は、とても幸せそうな笑顔だった。
                                   ~終わり~


作品名:夏恋花火 作家名:月とコンビニ