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How I Met Your Father

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木枯らしが吹く遊歩道。
久しぶりに彼とデートを楽しんだ。
長い髪を三つ編みにして、セーターを着こんで…。
でも、ちょっと襟元が寒かったかな。
ぶるっと少し身震いしたら、彼が
「ほら、ちょっと止まれ」
といって、そっと私の髪に手をかけた。
ゆっくりと、私の三つ編みをといていく。
男の人の手とは思えない細いきれいな手で、髪を梳いてくれる。
「これで、首が寒くないだろう?」
と、微笑みながら言って、私のおでこにキスをしてくれた。

家について暖房を入れても、まだ体が寒いなーと感じた。
喉も痛い…。
もしかして、風邪引いちゃったかな。
熱を測ってみたら、39度。
平熱低い私にとっては、もう40度以上あるような感じ。
数字見ただけでぐったり。
顔を洗うのもそこそこにパジャマに着替えてベッドにもぐりこむ。

…音楽が聞こえる…。
夢うつつの中でそう思っていた。
鳴り止まない音楽。
はっと意識が戻って、それが電話のベルだと気がついた。

「…もしもし…」
「俺だ。あれからお前のことが気になっていたんだが…どうした、なんか元気ないな。もしかして風邪引いたか?」
「…うん…そうかも…でも大丈夫……しばらく寝たら…」

後は覚えていない。
受話器を持ったまままた夢の中に落ちていってしまっていたみたいだった。

首の後ろがひんやりする。
ふと目を開けたら、目の前に彼の心配そうな顔があった。
あの後すぐに私のアパートにやってきて、以前渡してあった合鍵で入ってきたらしい。

「ほら、薬飲んだのか。解熱鎮痛剤買って来たから飲め」

と、白い錠剤を二粒手に乗せて、もう片方の手にはミネラルウォーターのボトルを持たせてくれた。
首の後ろには、熱さましシートが張ってあった。
そして、脇にも…。
いつもだったら、人が寝ている間になにやってるの!って、突っ込んでいるところだけど、今回は彼の優しさに甘えちゃう。

「ありがとう…」

その晩彼は私のアパートに泊まって、うどんをやわらかく煮たのを食べさせてくれたり、その他いろいろと世話を焼いてくれた。
で、そのまんま。彼が私のアパートに居つくことになっちゃって。

「そしたら…出来ちゃったのよね…」

わたし達夫婦の恋バナに興味を持った娘にねだられ、昔を懐かしみながら話した。

「なに、ママ達出来婚だったの?」
「ウーン、ま、そういうことになるかな」

娘の冷たい視線が気になったが、まあ仕方ない。事実は事実だから。

「信じらんない。あのパパがねぇー」

昔を知らない娘が言う。
気難しくって、仕事の鬼で。
少しおなかも出っ張ってきたし、まあ、家系的にハゲにはならないだろうけど、もともとはさらさらだった黒髪にも白髪が
かなり目立ってきた。
私よりも一回りも上だから、娘にとってはもう「おじいさん」の粋に入っているのかもしれない。
だから、最近思春期に入ったおかげで、さらに父親と距離を置き始めている。

「ふふん。昔のパパはすごくハンサムだったんだから」

と、寝室から大切にとってある写真を入れてある小さな箱を持ってきた。
娘は蓋をあけ、一枚一枚手にとって眺める。
昔の父親の写真を見て、びっくりしているようだ。

「…まるでモデル並みじゃん」
「どぉ?あんたの友人にも自慢できるんじゃない?」

中でも一番写りのいい写真を手にとって

「これ、私、貰っていい?宝にする!」

そういって、私の了解も得ずに自分のパスケースの中に入れてしまった。


家族そろっての晩御飯。
彼は高校の教師だから、大体は晩御飯の時間には帰ってくる。

「ふふふ」

いつもは、むっつりしたまま急いでご飯をかきこんで自分の部屋に閉じこもってしまう娘が、彼をじっと見つめてニコニコ笑っている。

「…なんだ。ニヤニヤして。いいことでもあったのか」
「パパのこと、見直しちゃった」
「あ?」
「今度、デートに行こうよ」
「ああ!?」
「ご馳走様でした!」

そういって、席を立つと、娘は彼に抱きついてそして自室へと向かっていった。

「…何なんだ、あれ」
「ふふ。自分の父親を見直した、ってとこかな。ハンサムパパさん」

そして、相変わらず細くてきれいな手に、私の手を添えた。
ゆっくりと、彼が指を絡めてくる。

「じゃあ、お前は、かわいいママさんってとこか?」

軽く重なる唇。

明日からは、私と娘で、彼の取り合いになっちゃうかな。
彼が向こうに付いちゃったら、私は今大学で他県に行っている息子の下宿に転がり込むから。
そうちょっと意地悪言ったら、

「バカ言ってんじゃねえよ。俺にはお前だけだっつうの」

そういって、昔と変わらないやわらかい微笑を私に向けた。

「…大好きですよ、先生。今までも、今も、そしてこれからも」
「俺もだ…」

そう、私は彼の教え子でもあった。
ちょうど私が先生とであった頃の年齢にさしかかった娘。
わたし達の馴れ初めを聞いたら、今日よりももっとびっくりするかな。
でも、それはもうちょっと後回しにしておこう。
作品名:How I Met Your Father 作家名:moon