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レモラ

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町の人々はとても困っていた。
薬を作る為には、高山でしか生えない薬草を採ってくるしかない。しかし最近、そこに化け物が住み着いてしまったらしい。高山といっても危ない所に生えている訳でもなく普通に群生しているため、小遣い稼ぎが目的の若者が採りに行く事が多かった。
その若者の一人が大怪我をして帰ってきたのだ。
友人に支えられて帰ってきた彼は、化け物に襲われたと語った。友人達も見たらしい。
勢いよく向かってくる、大きな体をした毛むくじゃらの化け物の姿を。

すぐに討伐隊を組むことになったが、戦争も狩りもしたことがない国の男達は、未だ見ぬ化け物に完全に臆してしまっていた。
結局、討伐隊は十数人しか集まらなかった。

集まった男達は馴れない武装をし、勇み足で高山に向かって行った。
戦や狩りの経験はなくとも、前から狩りをしてみたいと思っていた戦闘狂予備軍の男は何人かいた。そういった男は眼を血走らせながら目標の捜索を進めた。
いつどこからどんなものが襲ってくるかわからないという緊張感の中、数時間が経とうとしていた。
心身共に疲労困憊で、今何かに襲われたら危険だろうという判断のもと、山を降りることになった。
しばらく歩いて麓に近づいてきたとき、隊の左後方からものすごい叫び声が聞こえてきた。
地面が震えるような叫び声。誰かが「逃げろ!」と言って駆け出した。恐怖は伝染る。それに続き、わらわらと駆け出す隊の人間達。
そして、ただ一人の男だけがそこには残った。
男はそれに立ち向かおうとしたわけではなく、腰が抜けて立てなくなっていたのだった。

背の高い草を豪快に掻き分けながらやってきたモノは、三メートルはあろうかという大きさで、全身は漆黒の毛で覆われていた。薄暗い中で光る双眸。激しい息づかいをする口。ただ、姿形は人間のものと相違なかった。山男とでも呼称しようか。
「な、なんだ…こいつは………」
男は情けない声をあげる事しか出来なかった。
山男はそれまでの荒い進行とは違い、口をパクパクさせながらゆっくりと男に向かってきた。男は焦りながらも、背負っていた銃を構えて火をつけようとした。こういう時に限って火がなかなか点かない。手が震えて言うことをきかない。
山男は手を前に伸ばした状態で徐々に近づいてきて、もう数メートルしか離れていない。
山男は徐々に近づいてきて、
徐々に近づいてきて、
徐々に近づいてきて、
徐々に近づいて
徐々に近づいて
徐々に








ダン!





気がつくと、男は両脇を抱えられ、引き摺られるように歩いていた。化け物は退治されたという。
そして、町に帰ってきた男はその日のうちに殺人の罪で処刑されてしまった。
作品名:レモラ 作家名:葉山月