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ラーメン

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列んで待って。
漸くカウンターの、爪楊枝で歯の間を掃除しているオヤジの隣に座る。
お昼休み後25分。
一番簡単なラーメンを頼む。
「おまちどう」とカウンター越しにラーメンを差し出す彼。
ウィンクは「チャーシュー多目だよ」と言う合図。
お互い仕事が忙しく中々会えない私達のささやかなデートだ。

彼は私が勤務していた会社に時々出前を持ってきていた。
会社近くにある中華料理店で働いている人。
金髪に染めた長い髪。
入り口近くに席があった私は、その受け取り係りをよくしていた。
外見には似合わず、一生懸命働く彼の姿に好意を持ち始めていた。
夜勤で夜食を頼んだときも、寒い中彼が出前を持ってきてくれた。
お店の名前が背中に入った皮のジャケットを着て。
「それ、頂戴?」
なんて、冗談で言ってみた。
「ダメだよ」
と、少し顔を赤く染めてエレベーターに乗って戻っていってしまった彼の背中になんか胸がときめいてしまった。
ある日、彼が髪を金髪から紫に変えて、会社に出前を持ってきたことがあった。
「あー!なんで色変えたの!?金髪のほうがよかったのに!」
と、口を尖らせて言ったら、なんと次の日また金髪に戻っていた。
「これ…もしよかったら…一緒に見に行かない?」
と、出前ついでに出された映画のチケット。
人気のあるアクション映画だった。
普通なら女の子デートに誘うなら、ラブロマンス系じゃないのかな?と思いつつも、
「ありがとう」
と受け取った。
彼のお店は週7日開いている。
彼は、火曜日と月一土曜日にお休みをもらっているらしい。
私の会社は日曜日そして後月に4日、好きな曜日に休みを取れるようになっている。
だから、平日の火曜日を選んで彼と映画にいくことになった。

バイクに乗って駅前にやってきた彼。
よかった、ジーンズを履いてきていて。
彼がヘルメットをかぶせてくれた。
私が後にまたがり、彼のお腹周りに手を回したとたん、バイクが勢いよく走り出した。
すいすいと車の間を走り抜けていく彼。
映画館近くの駐車場に着いたときには私はもう映画を見終わったかのように興奮していた。

映画館で映画が始まる前にポップコーンを頬張りながらぽつぽつとお互いのことを話しだした。
彼は、調理専門学校に行くための学費を稼いでいるところ。
彼が今働いている中華料理店は遠い親戚の経営するお店だ。
大学に行けとうるさかった両親の下を去り、この親戚を頼りに他県から出てきた。
私は、特に何の目的があるわけでなく、ただダラダラと大学に入り、今働いている会社に受かったら働いているだけ…。
夢を持っている彼がまぶしく感じた。

それからだ。
私は昼休み、時間があれば、彼の働く中華料理店へ、オヤジに混ざって食べに行くようになった。
彼も、昼休みは出前に出なくなった。

ラーメンどんぶりを両手で受け取ったら、彼の指の先がそっと私の手に触れた。
「今夜大丈夫?」
の合図。
私は周りに気づかれないよう、彼に向かって微笑んだ。
作品名:ラーメン 作家名:moon