更新日時:2016-06-15 14:56:46
投稿日時:2015-01-07 07:53:23
潮騒
作者: 楡井英夫
カテゴリー :恋愛小説(純愛)
総ページ数:2ページ [完結]
公開設定:公開
読者数:0/day 3/month 857/total
ブックマーク数: -
いい作品!評価数:0 users
著者の作品紹介
――半年前、スペインに行くことを告白された。雪が降る日だった。ホテルの部屋から雪が海に降り注ぐ様を見ながら抱き合った。愛を確かめあった後、奈々子に向かって和樹は「幸せになりたかったから、普通の人と結婚しろ。俺のような風来坊はやめとけ。俺は風のように気まぐれに生きる人間だから」と快活に言った。
「私はずっと和樹と一緒がいい」と応えると、彼は微笑んだ。その微笑がどんな意味があるのか、直ぐに分かった。奈々子も恋の経験なら、五回はあった。多いとはいえないけど、男がどんな生き物かは知っていた。
「五月になったら、お別れだ。いいね。決して、その先があるとは思わないでくれ」
「分かった。でも、それまで私を愛して」と奈々子は懇願した。
あれから半年近くが過ぎたのだ。――
沈黙したままだった。二人とも何を言っていいのか分からなかったのである。
奈々子は年下の男に泣いてすがるような真似はできなかった。その思いが二人の間に線を引き、そして奈々子は偽りの自分を見せてきた。けれど、今は違う。何かにすがって生きたい。何でもいい。心の拠り所になるものが欲しかった。そうだ、一線を越えよう。そして本当の自分をさらけ出そう。泣いてすがろうと思ったとき、音がした。そんなに遠くからではない。耳を澄ませた。水の滴る音だ。ぽちゃん、ぽちゃんと。水道の蛇口が少し緩んでいて、水が漏れて、それがコップに落ちて音がしているのだ。
その音を聞いているうちに、激しく起こった熱情が急に冷めていった
「私はずっと和樹と一緒がいい」と応えると、彼は微笑んだ。その微笑がどんな意味があるのか、直ぐに分かった。奈々子も恋の経験なら、五回はあった。多いとはいえないけど、男がどんな生き物かは知っていた。
「五月になったら、お別れだ。いいね。決して、その先があるとは思わないでくれ」
「分かった。でも、それまで私を愛して」と奈々子は懇願した。
あれから半年近くが過ぎたのだ。――
沈黙したままだった。二人とも何を言っていいのか分からなかったのである。
奈々子は年下の男に泣いてすがるような真似はできなかった。その思いが二人の間に線を引き、そして奈々子は偽りの自分を見せてきた。けれど、今は違う。何かにすがって生きたい。何でもいい。心の拠り所になるものが欲しかった。そうだ、一線を越えよう。そして本当の自分をさらけ出そう。泣いてすがろうと思ったとき、音がした。そんなに遠くからではない。耳を澄ませた。水の滴る音だ。ぽちゃん、ぽちゃんと。水道の蛇口が少し緩んでいて、水が漏れて、それがコップに落ちて音がしているのだ。
その音を聞いているうちに、激しく起こった熱情が急に冷めていった