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佐崎 三郎
佐崎 三郎
novelistID. 27916
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「幻影の海と太陽と」

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「幻影の海と太陽と」 ~ 鎌倉の材木座海岸にて

我ひとり海にいきけり
むつきの風はつめたくあれど
かよわき風に浪はしずかにたゆたふ
新しき履物は砂になじまずに戸惑いて
ちいさき咳声轟かす
帆の踊る浪の原をみ
なにをかただ想わむ
いたづらに両手かかげ陽光のもと
言葉にならぬ言葉をひろげてみれば
陽の矢が我が胸を刺し抜けり
その矢にみゆるものひとつ
しかして幻のごとく消えゆけり
おもむろにその矢を手すれば
ほろ苦き温もり残し
まるで太きペンの如くにあれば
いにしえのひとの習わしをしてみむとてするなり
白き湿りし砂のキャンヴァスにむかひて
我が刺し抜きたりしその名を慣れたロウマ字で刻む
幾度の浪に消し去りしが
想い途切れることなし
(ただ新しき履物は海水の虜になりし)
永遠の浪のくりかえしに似たり
つまりに西洋歌留多の柄を刻むれば
陽はその文字を輝かせり
ふとみれば
その刻まれし砂のうえに不可思議な薄黒い染みが生まれ
染みはひろがりある人影をつくりし
我が隣に並び 我は問う
Who are you ?
フぅアぁユぅ、フぅアぁユぅ
風の声を鼓膜が捉えしが
応えはいっこうに定まらぬ
すれば人影に息吹をあたえ
立ちあがりて 言葉でない言葉が震え来しオト
I am the sun.
I am the sun.
フレアの如き揺れしオトが
我らが影を色濃く焼きしめし冬の海
陽を背負いて 
陸に帰る
四本の踏みのこし足痕を
浪はやさしき吐息をかけ
更地にもどし
しょっぱい涙を
吸いこまむ