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プロローグ

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正月三日、夜のこと。
 午後三時半。夫は友人との新年会へ出かけていき、わたしは一人テレビドラマの再放送を眺めていた。『相棒』シリーズは実家にいたとき好んで観ていた。ただ、小一時間もするとじっとしていることに飽きてしまい、取り込んだ洗濯物を片づけることにした。この一週間余り、毎日夫にくっついて過ごしていたので、急に一人になって少々暇をもてあましていた。
 午後六時。上階からリビングへ戻ると、数時間つけっぱなしのテレビが無操作のために自動で電源が落ちていた。DSでマリオゲームに発奮するのにも読みかけの長編小説を読むのにも飽きてしまい、わたしは早々と一人分の晩ご飯の準備にとりかかった。どうにもやる気が出ない。
 わたしはもともと一人で過ごすことが嫌いではない。むしろ、ふらりと海外旅行へ出かけてしまうような風来坊のはずである。ところが、結婚して以来、週末は常に夫と行動を共にするようになった。彼は良きパートナーなので、何でも共有することができる。例えばジョギング。もともとは彼が走るのが好きで、わたしも真似して走り始めた。サイクリングもそうだ。彼と同じ景色が見たいと思い、ロードバイクを買った。夫が一緒でないと外出する気も失せてしまうようになった。読書。多少の趣味の違いはあるが、わたしが読みたい本は夫の本棚からも見つかる。食材の買い出し。たいてい週末は散歩がてら共にスーパーへ行く。海外へ嫁いだわたしの友人が日本に一時帰国したため、年末に連れだって会いに行った。
 あらためて思う。新婚とはいえ、なんとまあオシドリ夫婦ではないか。通勤途中によく見かける、近所の川に棲みついたカモの一家のようにほのぼのしている。もちろん夜の営みに関しても満足している。まことに結構なことだ。だが最近、ほんの少し不安なのだ。何か忘れているようで、そわそわと落ち着かない。
 ネットサーフィンしたり、SNSをのぞいたり、心にかかったもやの正体について探索してみたが、これだ!という決め手はなかなか見つからない。こういうときには、とりあえず文字にしてみようとノートとペンを取り出し、心の声を書き出してみた。
 『わたしは淋しいのだろうか。』と書き始め、ああそうかとようやくもやの正体に思い至った。自分の中にある『思い』を吐き出したくてうずうずしていたのだ。わたしの体内の中心にある心のずっと奥には泉があり、絶え間なくぽこぽこと『思い』が湧き出しては泡のように脳天へと立ち昇っていくのだ。結婚以前はそれをノートに書き留めることで消化してきた。新生活を始めて以来、日常の慌ただしさにまぎれて、作業をすっかり怠っていた。おそらく体幹が根詰まりをおこしているのだろう。
 そういった次第で、久しぶりにどこか人の目に触れる場所へ投稿することを思いついた。
 さて。何を書こうか。
作品名:プロローグ 作家名:うるるん