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脳内文通

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あっはは、まさか私の声を文章に書き起こしてしまうとはね、おかげで僕も自分の奇妙な二面性に気づけたよ

気付いてしまえば面白くてたまらないよ、まさか自分が二重人格だったとはなぁ、こんな事をいい年して言い出してしまうなんて、なんてはたから見たらなんて気味の悪いジョークだろうねぇ、まぁ僕は気にしないけど、向こうの私は嫌がるだろうけど、ははは

そう、僕と私、名前でもつけたほうがわかりやすいかな?
ならば、僕は伊神、向こうの私は移蔓と名付けようか、どちらかに本名をつけるとまたややこしくなりそうだからね

まだ語りたい事は多いけども、一度移蔓くんとして思考を切り替えようか、独白してる方が私は楽しいけども、向こうとしても書かなければ、面白くないからね

1.
気味が悪い、私の頭の中でしていた声に、溢れ出す悪意に脳を支配されて、気づけばトランスしたように言葉をメモ帳に書き付けていた
それを見た私の驚きたるや、測り知れない
自分のことをよく知った、自分でない人の文章が、そこにあったのだ
そして、向こうの自分は自分が伊神を名乗り、私が移蔓と名付けた
それについては私も異論はない、どちらが本物という訳じゃない、両方が偽物なのだ
向こうの自分の名前は伊神 片時
歪んで、体の方しか時間が進まなかった、悪意に溢れた、もう一つの思考回路

ほんっとう、移蔓として書いた文章は面白くないな、あれは人の目を意識しすぎてて、自分がない
だからあいつの名前は移蔓 空白
空っぽの中から生まれてきて、一人歩きを始めたもう一つの思考回路
人間嫌いの僕がついた対人用の嘘人格
それをやり過ぎて気づけば別人を気取って、自分が本物と主張を始めたつまらん奴だよ
書いてる文からも滲み出る尻切れトンボで独り善がりな自己完結した文章、バカみたいだなぁ
あいつの文がポエムと表現されてるのは、うん、笑ってしまった

移蔓の話はいいや、あいつは表舞台
に立ってたから知ってる人は多いだろうしね
僕の話をしてやろう、なんてね
これを読んでる君は口下手かな?それならわかってくれると思うのだけど、口下手な人間は文章で思いを伝えようとするもんだからね、僕もそのうちの一人なのさ
人の前に行くと考えすぎてしまうんだろうな、この人はきっとこう考えるかもしれない、こうしたら得をする、損をする、いろいろ考えるのだけど結局は、この人は僕を裏切るんじゃないかな?って事に落ち着くんだけどね
そんな風に人を見る僕を移蔓はものすごく嫌がっていたのだけど、そんな変なことかな?
この世界は嘘つきばかりだからね、僕も、移蔓も、これを読んでる君もじゃないかな?
腹に考えを持ちながら自分の(精神的なものも含む)損得のために相手を選んでるんじゃないかな?

わかりにくいかな?なら簡単に例を挙げてみよう
例えば君に友人が二人いて、その友人同士は面識がないって事にしよう
その二人から同じ日に遊びに誘われた、当然どちらかを選ぶしかないよね?
そして、当然選ばれない人も出てくる、それは別段誰かが悪いって話じゃない
でも、当事者からしたらどうかな?誰も悪くない、なんて事実は関係ないんじゃないかな?実際傷ついて、精神的に損をしてしまってるのだから
物でも例えてみようか、例えば別企業から出してる洗剤がある、性能も同じで値段も同じ、ただ匂いが違うだけ
そんな商品二つが競っていて、どちらが人気かの最終的な決定権が君の手にあったとしよう、ちなみに負けた方は倒産する
この例なら物凄くわかりやすいな、君が最終的に選ぶ、そして選ばなかった方は潰れた、なら悪いのは?
悪者が居なくても、憎まれるのは君だよね

この世界は選択に満ち溢れているね、それは当然のことであって、手に入れるために切り捨てるのは当然なんだろうね
だからこそ、僕はこの世界に宛先のない憎しみを持ち続けてるんだ

少し昔の話だけども、辛くて、苦しくて、泣きたい時に手を差し伸べてくれる人は居なかった、何度も、何度も悩んで一人で歩いてきて、傷ついて、それでも誰も悪くないだなんて言われても受け入れられない
だからこそ、この世界全てを憎むしかない、それが僕の悪意の根本だよ
この文章を書くのもその八つ当たりなのかもね、ざまあみろ、悔い改めろ、身の回りの人を助けて回れ
みんな傷ついて、傷ついて、傷ついて、僕みたいになっちまえ、そしたらこの糞みたいな世の中も多少はマシになる
僕は人が大っ嫌いだ、移蔓はその事を物凄く恥じて、隠してるけども僕は気にしない、人に優しく出来ない奴は死ね、とまでも言ってやる、ははは、これを読んで不快な気持ちな人が出てくるのが楽しみだ

2.
こんなにもトランス状態になったのは初めてかもしれない、身体と脳髄がとても重い
冷静に読むとひどい文章だ、ほとんどが暴言、妄想、自己顕示でしかない悪意の走り書き
流石にこれ以上続けるのは身体が持たないので今日はここで切り上げる
きっと伊神は一晩中でも平気で怨嗟の声を上げ続けるのだろうけども、日中仕事をする私の身にもなってほしい、向こうは頭の中で喋り続けて邪魔をするしかしないのだから
仕事も何もしないくせに本物は自分だと言い出す恐ろしく自己中心的な思考回路、醜くて、鎖で縛って奥底に隠しておくぐらいがちょうどいい

作品名:脳内文通 作家名:伊神片時