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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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宗教のおばちゃんとの勉強~戦い…?!競争…?!~

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そして、また次の質問へと行くのだが、宗教の勉強の手引となる本には、聖書の読むべき部分が書かれている。
その部分を私とおばちゃんとが交互に読んで行くシステムなのだが、聖書というものは静かな場所で、ゆっくり小さな声で読むと教えられている。
そのことについては、私よりベテランのお母さんから何度も何度も言われ、当たり前に分かっていることだった。

私は聖書を開くことにまだ慣れていないので、勉強する部分には全て付箋(ふせん)を貼り付けていた。
それでもいつももたついてしまって、おばちゃんが笑顔で待っていてくれる。
そしてそんな私にいつも、
『大丈夫ですよ。だんだんと慣れて、いずれ私のようにサッと読むべきところを開くことが出来るようになりますよ。』
とおばちゃんは言うのだった。
私はこんな大きな本、本当に慣れるのかなぁ~と思っていた。

そしておばちゃんがいつものように、
『聖書の何ページを開いてください。』
と言った。
私はいつものように付箋の部分からその場所を探して開いた。
その時初めておばちゃんより早く聖書を開いた。
でもそれはたまたまだった。
丁度触った付箋が、今開くべき部分だっただけのことで、ただそれだけのことでおばちゃんより早くなったということだった。
本を開いた私は、まだその部分を探しているおばちゃんの方を見ていた。
私が待っている姿を見ておばちゃんの顔色が変わった。
ゆっくりめくっていたと思ったその手は、本の紙がちぎれるかと言わんばかりに音を立て速くなった。
だからなのか、ところどころおばちゃんの聖書は破れていたり折れ曲がっていたりグチャグチャになっていたりしていたのは…なんて思い出した。
まあ、事実は分からないけど…。

おばちゃんがそのページを開くと聖書に目を落としたまま、
『まぁ、あなたは付箋を貼っていますからね、何処を開くかはすぐに分かりますからね。』
とつぶやくように、しかし冷たい感じでおばちゃんはそう言った。
私は一回一回、何かやらかしているようだった。
ちんちくりんだからか、人を思いやる心がないからか私はいつもそうなる…。
おばちゃんがこんな風になる地雷のスイッチが何処にあるかは分からないけど、なってからまたやらかした~とか思うけど、自分をコントロール出来ないからやっぱりこんな風にしくじる…。
私ってこんな人間…。

そして、おばちゃんが、
『では、この部分は私が読みますね。』
とどうしてか冷たい言い方して、その部分を読み始めた。
しかもおばちゃんたちが伝えている読み方とは真逆の猛ダッシュで…!!
私はたまげてしまい、その速さに追い付くため文字を追うのに目を急がせた。
目を急がせたら文章が頭に入らない。
おばちゃんは読み終わった。
読み終わるとドヤ顔ですぐに私を見た。
そういう競争をしたらいけないと宗教の人たちもお母さんからも言われているのに、おばちゃんのこの状況は良いのだろうか…。
そんなことを心で思っているとおばちゃんが、
『では、ここはどういう意味だと思いますか?』
と聞いてきた。
予習復習をしてはいるが今の気持ちというのもあるから、ノートに書いていた答えだけではなく、プラス何かを言えたらと思うこともあるので、その部分を声に出さずに読み返していたら、おばちゃんが、
『私が読んでいるのを聞いていなかったんですか?』
と冷ややかな視線を私に向けるとそう言った。
ビビったので私は読むのを止めて、ノートに書いてある答えを読んだ。
その瞬間おばちゃんは笑顔になり、
『はい、その通りですね。』
と言った。
やっぱりこのおばちゃんめちゃくちゃ怖い~!!と感じた。
でもお母さんから、
“この宗教だけは違うから勉強を続けて。”
と言われていたので、それを信じて私は続けていた。

そして次の質問文へと行くと、おばちゃんは、
『では、聖書の何ページを開いてください。』
と落ち着いて言うやいなや、今の落ち着きは何処へやらで、また本が破れそうな音を立たせながら、すごい速さでその部分を開いた。
そして私に顎を突き出すようにしてドヤ顔を向けた。
さっきのことがあるからだと思った。
まだその場所を探している私に向かって、ドヤ顔のまま、
『まだ開いていないんですか?』
とすました顔をして、冷たい口調で言った後、
『大丈夫ですよ。…徐々に慣れていきますからね。』
と優しく笑顔で言った。
たった今冷淡だったのに、何があっての一瞬でここまで笑顔になれるのだろうかと考えさせられる。

おばちゃんからは、おばちゃんは一人っ子ということも聞いていたので、それも関係があるのかなぁと考えたりもする。
わがままに甘やかされて育ったとか…、いろいろその瞬間に考えさせられる。
これも勉強の一貫かもと思うと、人の心についての勉強にはなる。
ただ、私にはマネは出来ないが…。
“こんな私のようになってはいけませんよ。”
とはおばちゃんから言われてはいないが、言ってくれたらなぁ~と思う。
その時はおばちゃんの猛ダッシュの如く、間髪入れずに私は、
“はいっ!!”
と返事をするだろう。

次は私が読む番となった。
おばちゃんは猛ダッシュで読んだけど、私はそんなマネは出来ないし、やっぱり今まで言われて来た通りの“ゆっくりと小さな声で。”の読み方で読み始めた。
三行目くらいの時に(文字数で言うと四十字ほど)、私にツッコミを入れる感じでおばちゃんが、
『もっと速く読んでください。』
と焦らさせるような感じでそう言った。
ついに私も豹変した。
おばちゃんよりも速く読んでやった。
これなら文句はあるまい。
読み終わった私におばちゃんからの文句はなかったが、その代わり、
『はい。』
という冷たい返事が届いた。
読んだら褒めたり良いところを言うのが普通らしいが、私の場合こんな風に冷たい返事だったり無視だったりが返ってくるのが普通となっている。

また次の質問へとなるとおばちゃんが、
『では聖書の何ページを開いてください。』
と言った。
またもやあの慌ただしい姿でページをめくるおばちゃんが現れた。
本が破れたらショック受けるよ~と心配になった。
私はさっきのことで学習したので、おばちゃんが急いでそのページを開いている横で、ゆっくり本を開くことにした。
もちろんおばちゃんの方が先に開くから、私がその場所を開いている姿をおばちゃんが見ることになる。
そうなるとおばちゃんは満面の笑みで私を待ってくれる。
そして、
『ゆっくりで構いませんよ。いずれ慣れますからね。』
と優しく言うのだ。
でも、本を読む時になると超ダッシュで読み進める。
聖書に反してる…と思いながら一生懸命私は文字を目で追う。
そして読み終えると私にドヤ顔をする。
私が読む時もおばちゃんに負けずとダッシュで読むようになった。
ゆっくり読んで、また注意されるのも嫌なので…。
私にだって少しの学習能力はあるようだ。

神からの霊感で、おばちゃんは、
“争いはダメですよ。”
とか言われないのかなぁ~なんて思う瞬間もある。

キリストはずっと呆れていたけど…。

実に難しいおばちゃんだ…。
それか私が難しい人間なのかも…なんて考えるのだった。

それでもまだまだ勉強は続くのだった。

そして、