12,D.I.K日記(12月25日)一回目
僕が怒り狂い、将棋のトルフィーを窓に向けて投げつけてから2日目。
昨日はあの恵ちゃんと手話でコミュニケーションが取れた。優しい恵ちゃん。
僕に合図をくれた。
今日はクリスマス。朝テレビで占いがやっていた。今日やぎ座生まれの人、素敵な出会いがあるかもーって、閉鎖病棟で出会いなんかねえよ。
PTの馬込さんが、僕のベッドの所にやってきた。
「椎名卓君?」
「はい。そうです」
「女子病棟の恵ちゃんから君に渡すように言われたんだけど、USBフラッシュメモリ。はい」
「恵ちゃんが僕に?」
「椎名君。まだOT来たことないよねえ。恵ちゃんと知り合い?」
「ええ。まあちょっと」
「まあいいや。あんまり女子病棟の人との物の受け渡しとか、ここうるさいから、こっそりやってね。なんか恵ちゃん使ったらすぐ返してねって言ってたけど」
「分かりました」
マイコンピューターから、フォルダ、中に画像が張り付けてある。絵だ。共有スペースのテレビの前。神奈川新聞もある。今日のさっき撮った写真だ。人を描こうとしているのか?何だろう?
作品名:12,D.I.K日記(12月25日)一回目 作家名:松橋健一