9,D.I.K日記(12月22日)
今日は小野田という男と話をした。小野田は小柄のおじさんを子分の様に引き連れていた。小野田自身まだ若そうなのに。
癒し系キャラのおじさんだ。
「名前は?」
「吉本」
歳は50歳近いだろう。いつもニコニコしている。三人で話をした。早く退院したいと皆思っている事。僕が院長のSEKAI NO OWARIの話を皆に聞かせると、
「ウソだー。院長がそんな事言うの?」
皆びっくりした。僕が早く退院してジェラシック・ワールドの映画を見たいというと、
「恐竜は怖い」
と、癒し系の吉本というおじさんは言った。
小野田が、
「別に映画だから怖いことないじゃん」
と、言うと、吉本さんは、
「いつも野獣だ。野獣だって声が聴こえるから怖い」
そう言った。
「それって幻聴?」
僕が訊くと、
「そうみたい」
こんな癒し系キャラの人がそんな幻聴きこえるのか。面白い人たちだ。
女子病棟に可愛い子がいる事についてそれとなく聞いた。
「あっ。それ恵ちゃんだよ」
彼女は開放病棟と閉鎖病棟を行ったりきたりしているらしい。僕はまだ許可が出てないけど、彼女は普段作業療法の為、OT室に行ってそこでパソコンや、ケーキの箱作りをしているそうだ。そうか、OT室に行く許可が下りれば会えるのか。
作品名:9,D.I.K日記(12月22日) 作家名:松橋健一