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渇き

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青くても グレーでも 
空は 静かで
地雷を踏むことも 銃撃されることもなく

人が 犬を連れて 歩き
老人が 自転車にのって 少しふらつきながら とおりすぎてゆく
幸せがうもれてしまうくらいに へいわな じかん
それなのに まだたりない、まだ欲しいと嘆き
満ち足りないと あがきながら おぼれていく

何が そんなに 欲しいのか
あとどれほどのものがあれば 満ちるというのか

なだらかな地を駆け
静かな空に向かって叫んでみればいい

私は なにが ほしいのか、
私は どれだけ ほしいのか、と

息を切らし
声を嗄らし


ジャングルに眠る 猿のように
サバンナを駆ける 獣のように
狩られることも 撃たれることもなく
闇の気配におびえる必要も
生きるために肉を求め、命がけで疾走する必要もない

スーパーで今日は何を食べようかしらと食材を迷い
蛇口から出る水を飲み
湯で体を洗う
傘で雨をよけ
暑ければ家の中へ
寒ければ家の中へ
体力も時間も余っているから
意味もなく誰かとつながってみたり
しらけたおしゃべりを続けたり
たいして好きでもない人と会い、
おかしくもないことで笑い、相槌を打つ

そして何かが足りない もっと楽しいことがあるはずなのに と、嘆くのだ

なにが 足りない?
なにが 楽しい?

ジェリーの繭から頭をつき出してみればいい
柔らかなものを突き破り
未知の熱に焼かれながら 叫んでみればいい

私は なにがほしいのか、
私は どれだけほしいのか、と

息を切らし
声を嗄らし


作品名:渇き 作家名:伊武門