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月とコンビニ
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神SUMMER

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神SUMMER

【著】   ?ぼぶ?松田
【ページ数】2〜4人ぐらい
【登場人物】4人
 ・男
 ・女
 ・神主「晋三」
 ・神「井卦之御衣」

●男 登場、歩きながらタバコを咥え、火をつけようとする、神社の祭りに気づき眺める。
男「もうそんな時期か…」
●男 ハケ
●女 登場、神社の鳥居でポツンと独り立っている
女 「…………」
●男 登場、女を見つけ、なんとなく声をかけてみる
男「…独り?」
●女 男のかけ声に驚くも、直ぐに地面に目を下ろす
女「…………待ってるんです」
男「友達?…それとも彼氏?」
女「…どっちも不正解です」
男「…じゃあ家族か」
女「…それも不正解。」
●男 吸っていたタバコを地面にすて、火を消す。
男「全部外れか…それじゃ、誰を待ってるのさ?」
●女 男を見て、また地面に目を下ろす。しばしの沈黙の後顔を上げる
女「……私を置いていった、彼氏です」
男「なら最初の答えで正解だったじゃないか」
女「…そうですね。正解であって不正解なんです」
男「どういう意味だ?」
女「もう…5年前から待ってるので。彼氏と言っていいのか、悪いのか」
男「…なるほど、それで不正解、ね」
女「……はい。」
●男 女 沈黙。女 男に問いかける
女「……貴方もお独りなんですか?」
男「…あぁ。ここの祭りを見かけてね。自分でもなんの気まぐれかわからんが、覗いて行   
  こうかと。」
女「…お祭り、お嫌いですか?」
男「え?」
女「すみません、そう感じたので」
男「……苦手、かな」
女「……苦手、ですか」
男「もう10年も前の話だが…その時好きな子がいてね。その子が祭り好きで、この時期に 
  なると一緒に祭りに行ったんだ。」
女「そうなんですか。でも、苦手になるような所がないですね」
男「その子…もういないんだ」
女「えっ?…ごめんなさい」
男「…昔の話だ」
女「…私の彼氏もお祭り好きでした。もちろん私も。」
男「そうなのか?」
女「えぇ…でも大好きなお祭りで、大好きな人に置いていかれました」
男「笑顔なのに言っていることはとても悲しいな」
女「5年も経つと悲しみも薄れます」
男「…強いんだな」
女「そんなことありません。」
男「少なくとも、俺よりは強い。俺は未だに悲しみが薄れていかない。」
女「私と事の大きさが違います」
男「それでも、君は強いと思う」
女「……ありがとうございます」
男「……君はこのままここで待つのか?」
女「はい、終わりまで。独りで回ってもつまらないですから」
男「……なら俺と回らないか?」
女「え?」
男「せっかく祭りに来てるんだ、何もしないで終わるなんてもったいない。それにこれも
  何かの縁だ。…どうだい?」
女「……………」
男「無理にとは言わないが…」
女「そうですね、一緒に回りましょうか。でも、苦手なお祭りですけど、大丈夫ですか?」
男「もともとは俺も祭り好きだ。君に勇気をもらって、言ってるんだ」
女「…そうですか、なら良かったです」
●男 女 祭りへ歩き出す
●男 女 ハケ
●神主、神入り。神主はタバコを吸ったり色々、ガラが悪い。
神主「この神主様はなぁ、てめぇらが祈ってる神さんの声が聞けるんだよー」
神「こいつぁ、信じてねぇなぁ」
神主「そいつぁ、困ったもんだ」
神「いっちょ、信じさせてやるかぁ」
神主「おぉい、神様よぉ、聞こえるかぁ〜?」
神「聞こえねぇなぁ〜?」
神主「カミサマが聞こえねぇってよ〜」
神「告白が成功しますように。だぁ〜とよ」
神主「だったらもっとよ〜? 気迫を込めやがれぃ! 気迫をぉ!」
神「こいつぁ〜だめだ〜、叶えられねぇわ」
神主「残念だったな坊主、てめぇの願いは叶わねぇってよ。出なおしてこい!」
神「晋三! 次だ次ぃ」
神主「よしきた、次ぁなんと可愛い女の子だぜ」
神「晋三よ、そりゃあ、聞き入れてやらにゃあ神の恥。ってもんよ」
神主「おうよ、それでこそこの神社の神さんじゃい!」
神「……晋三よ」
神主「あいわかった」
神「迷子の母よ、現れい!」
神主「嬢ちゃん、あっちを見てみい。母ちゃんが来るぞ」
神「もうはぐれんようにな」
神主「もうはぐれるんじゃねぇぞ〜!」
神「祭りの夜ぁ、大変よのぅ晋三」
●神主、神の部分暗転。男、女入り。
男「拝殿の方から戻ってくる人が多いな」
女「この神社、有名なんですよ」
男「有名?」
女「はい、戻ってくる人の顔を見てください」
男「喜んでる人と、悲しんでる人がいるね」
女「そうなんです、この神社、お願いごとの結果がすぐにわかるんです」
男「どういうことだ?」
女「ここの神主さんが神様と仲が良くて、教えてくれるんです」
男「すごい人がいるんだな」
女「はい」
男「……君は願わなかったのか? その、待ってる人のこと」
女「……願いました」
男「……そうか」
女「でも、諦めきれないんですよね」
男「行ってみないか?」
女「え? 屋台とか、回りましょうよ」
男「いや、行ってみよう」
女「あ、ほら、金魚すくいですよっ」
男「君、本当はまだ願ってないんだね」
女「え?」
男「本当のことを知るのが怖いんじゃないのかな」
女「そんな」
男「これからもずっと待ち続けるのか?」
女「……」
男「行って、みないか?」
女「……でしたら、貴方もちゃんとお願いをしてくださいね」
男「なにを?」
女「次に向かえるように。きっと、貴方の好きだった人も望んでると思います」
男「……そうだな」
女「約束ですよ」
男「……約束」
●神主、神の部分明転
神主「さぁ、次だ、来たぞ」
神「おうよ! さぁ、願えい」
●男と女は参拝する
神「おおう……おうおう……」
神主「どうしたぁ! おい、おめぇら何願ったんだ」
男「え?」
神主「ウチの神さんが困っとるけぇ!」
女「神様が?」
男「願いに戸惑ってるって……」
神「晋三、よせやい」
神主「どうした、困ってるよだが」
神「あぁ、こいつらの願いが同じでな」
男「叶えられないのか?」
女「お願いします」
神「おめぇら! 自分の願いを言えい!」
神主「自分の願いを言え」
男「自分の?」
女「もしかして、貴方も」
男「……君も?」
神「晋三、こいつら互いに互いの願いが叶うようにって願いやがった」
神主「久しぶりだな」
神「あぁ、久しぶりよのぅ、他人の願いが叶うようにって言葉は」
男「なんで、言わなかったんだ?」
女「貴方こそ、なんで」
神主「おめぇら!」
男「は、はい!」
神主「ここに来る必要はねぇようだ、神さんも言ってるぞ」
神「あぁ、自力で解決できる問題さ」
神主「その願いは自分たちでどうにか出来るさ」
女「自分たちで?」
男「……あぁ、自分でどうにかしなきゃならないよな」
神「また来な。小さい願いならなんでも叶えてやる。一回だけな」
神主「お前ら、また来てみるといい。神さんに気に入られたようだ」
男「帰るか」
女「はい」
●神、神主暗転
男「神様に願ってないで、自分で解決しなきゃならなかったな」
女「はい。そうでしたね」
男「ここの神主さん」
女「ちょっと怖かった、ですか?」
男「ははは、そうそう」
女「でもいい人なんですよ」
男「そうみたいだ」
女「ええ」
作品名:神SUMMER 作家名:月とコンビニ