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月とコンビニ
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novelistID. 53800
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一歩

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一歩
【著】   ぼぶとかぼちゃ
【ページ数】2〜4ぐらい
【登場人物】4人
 ・男
 ・女
 ・男2
 ・女2

●男 登場、歩きながらタバコを咥え、火をつけようとする、神社の祭りに気づき眺める。
男「もうそんな時期か…」
男 ハケ
女 登場、神社の鳥居でポツンと独り立っている
女 「…………」
男 登場、女を見つけ、なんとなく声をかけてみる
男「…独り?」
女 男のかけ声に驚くも、直ぐに地面に目を下ろす
女「…………待ってるんです」
男「友達?…それとも彼氏?」
女「…どっちも不正解です」
男「…じゃあ家族か」
女「…それも不正解。」
男 吸っていたタバコを地面にすて、火を消す。
男「全部外れか…それじゃ、誰を待ってるのさ?」
女 男を見て、また地面に目を下ろす。しばしの沈黙の後顔を上げる
女「……私を置いていった、彼氏です」
男「なら最初の答えで正解だったじゃないか」
女「…そうですね。正解であって不正解なんです」
男「どういう意味だ?」
女「もう…5年前から待ってるので。彼氏と言っていいのか、悪いのか」
男「…なるほど、それで不正解、ね」
女「……はい。」
男 女 沈黙。女 男に問いかける
女「……貴方もお独りなんですか?」
男「…あぁ。ここの祭りを見かけてね。自分でもなんの気まぐれかわからんが、覗いて行こうかと。」
女「…お祭り、お嫌いですか?」
男「え?」
女「すみません、そう感じたので」
男「……苦手、かな」
女「……苦手、ですか」
男「もう10年も前の話だが…その時好きな子がいてね。その子が祭り好きで、この時期になると一緒に祭りに行ったんだ。」
女「そうなんですか。でも、苦手になるような所がないですね」
男「その子…もういないんだ」
女「えっ?…ごめんなさい」
男「…昔の話だ」
女「…私の彼氏もお祭り好きでした。もちろん私も。」
男「そうなのか?」
女「えぇ…でも大好きなお祭りで、大好きな人に置いていかれました」
男「笑顔なのに言っていることはとても悲しいな」
女「5年も経つと悲しみも薄れます」
男「…強いんだな」
女「そんなことありません。」
男「少なくとも、俺よりは強い。俺は未だに悲しみが薄れていかない。」
女「私と事の大きさが違います」
男「それでも、君は強いと思う」
女「……ありがとうございます」
男「……君はこのままここで待つのか?」
女「はい、終わりまで。独りで回ってもつまらないですから」
男「……なら俺と回らないか?」
女「え?」
男「せっかく祭りに来てるんだ、何もしないで終わるなんてもったいない。それにこれも何かの縁だ。…どうだい?」
女「……………」
男「無理にとは言わないが…」
女「そうですね、一緒に回りましょうか。でも、苦手なお祭りですけど、大丈夫ですか?」
男「もともとは俺も祭り好きだ。君に勇気をもらって、言ってるんだ」
女「…そうですか、なら良かったです」
男 女 祭りへ歩き出す
男 女 ハケ
男2女2イリ
男2「主様―!」
女2「主様―!」
男2「主様―!」
女2「主様―!」
男2「主様―?」
女2「主様―?」
男2「ああコレか紛らわしったらありゃしな祭りの席くらい出てきたらどうなんですか!」
女2「ですか!」
男2「僕らみたいのにばかり仕事させるから願いが叶ったりもするし叶わなかったりもする神社だよねでもそれっていたって普通じゃおっぱいおっぱいとか言われてうるせえわ!」
女2「せえわ! ごげぼげぼ」
男2「ほらー、君は病弱なんだからー、ねー、可愛い奴めー」
女2「奴め―」
男2「それはさておき主様、約束の御時にございます」
女2「祭りの喧騒の中にあり、確かに響く足の音にございます」
男2「自らの役を忘れた足が、いまその大役を思い出したのかの如く」
女2「足枷を鳴らし」
男2「自らを傷つけ」
女2「それでもなお、この社に至る階段を上がるのにございます」
男2「神に隠され六十の月」
女2「神に拾われ百二十の月」
男2「不肖の使いでありながら」
女2「その御身の御側に居れたこと、誠の喜びにございます」
男2「されどももう、約束の」
女2「その御時にてございます」
男2女2主様を蹴り飛ばす
男2「しー!」
男2女2耳を澄ます、祭りの喧騒が聞こえる
男2「聞こえる、がんがんと鳴っている」
女2「頭の中にもそう、鳴っている」
男2「かなしい?」
女2「しい」
男2「僕らにできることは一つだけだ」
女2「それってなあに? なんなのさ」
男2足を踏み鳴らす
女2「がん!」
男2「踊ることだね」
女2「踊ること!」
男2「ああ、踊ること!」
男2足を踏み鳴らす
女2「がん!」
男2「階段を登るは生きる人の役目。だから人はみな最初、生まれ、落ちるんだ」
女2「ならば生きぬ人の役目は」
男2「そう! 踊ること、舞うこと、自身の大切な生きる人のために」
女2「そうか、彼の人のために舞って、彼の人を待っているんだね!」
男2が足を踏み鳴らす
女2「がん!」
男2「さあ、踊ろう。彼らも階段を登ってゆく」
女2「がん!」
男2「がん!」
女2「がん!」
男2「がん!」
男2女2声高に笑う
二人「がん、がん、がががん! がん、がん、がががん!」
男2女2ハケ
男女イリ、祭りの喧騒が聞こえる
男「相変わらず、長い階段だな」
女「はあ」
男「ほら、大丈夫か」
女「はい」
男女最後の段を上がる、祭りの喧騒が遠くなり、消える
男「……」
女「きれい…」
男「ああ。ああ」
女「…」
男「会いたいなあ」
女「…はい」
男「…会いたいなあ、ちっくしょう」
女「…はい」
男「…」
女「一歩」
男「ん?」
女「怖いけど、一歩」
男「ああ」
祭りの喧騒が聞こえる
二人、光の中へ歩いてゆく
遠くから「がん、がん、がががん!」という声が聞こえてくる。

作品名:一歩 作家名:月とコンビニ