1、D.I.K日記(12月14日)
僕の名は椎名卓(しいなたく)。中学数学の塾講師。自慢じゃないけど生徒の成績を上げる点では5教科の中で数学担当の僕が一番秀でてるんだよね。でも何故か部長から認められていない訳よ。それどころか僕はリストラにあう事になっているのか、僕が生徒の人気アンケートで一番ビリだったことをいいことに、こないだ新しい数学講師の新米を、必要もないのに採用してるのマジで。リストラにあうのならこれは戦争だ。革命だ。言いたい事はこっちにもたくさんあるから部長に全部言ってやる馬鹿野郎。
もし部長が聞く気がないのなら世の中にうちに塾の実態を理不尽を暴露してやる。絶対に。
理不尽その1―国語担当の西城の存在。もう60近いおばあさんだ。ご隠居なんだよね。あいつは国語の教師でありながら、生徒の目の前で、「私は文学が嫌いだ」など、奇をてらう発言をする。文学が嫌い?冗談よしてよおばあさん。文学を否定する事は国語を否定することになるでしょ。はたまた勉強が嫌いというニュアンスを相手に与える。
そういう奇をてらう発言ないし、子供を堕落と甘さの世界に安住させ、自分の人気を高めている。
まあそんなお粗末な教師であることはいいだろう。これが個人プレーであれば。しかしだよ。被害をこうむるのはこっちだ。向こうは堕落の世界で人気を高めているから私の様な教師の本来の姿を全うしている人間が生徒の悪口の的になって、今リストラにあおうとしている。本当シャレにならないでしょ。日本国憲法26条にもある。
すべての国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
②すべての国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
ここに子供の学習権について書かれているんだけど、学習塾だから義務教育じゃないなんて言ってたら教師失格だよね。はっきりいって。子供に学習権があるにもかかわらず、教師が生徒の前で、勉強が嫌いだなんていったらどうなる?その無責任発言、憲法に違反してるんですけど。
それで人気を獲得しているから思わず部長に言ってやったの。
「不公平じゃないですか。ああいうのを良しとするならどっからどこまでが良くて、どこが悪いのか、はっきり秩序付けてくれないと困ります。教師のあるべき姿を。それがないとグダグダです。勉強を嫌いというニュアンスをもたせるなんて…、旅行にも行きまくってそれを生徒に話しているし…」
部長に真剣に話をした。しかし部長は、
「そうだな。西城君もそんなこと生徒の前で言っちゃあまずいな。困ったもんだな。じゃあ、勉強は旅行先で言語で苦労して、国語の大切さを分かってもらえばなあ」
部長は笑いながら話を聞いている。
今話しているのは旅行の話ではない。論理のすり替えをしないでほしい。真剣に聞く気がない。信じられる?一つの会社の部長ともある人間が、日本国憲法の基本的な事を全く理解してないなんて。
メンタルの話が通じないなら、実質的な話をしようじゃないか。確かに西城に問題があると思われる決定的事実。皆で助け合って有給を気を遣ってとっているのにあいつだけは5連休とって3泊4日の韓国旅行に出かける。残りの1日は余韻に浸るんですこと。
僕がその事務や模試の試験官という穴埋めをする。20代の可愛い子ならまだ分かるよ。まだ。しかし60手前になって、韓国に行って、韓流スターを団扇をもって追っかけ、ハイな気分になっているのもいかがなものだろうと思うんだよね。まるで頭の中がお花畑になっているとしか思えませんよ。
まあ俺もそうだが彼女は独身だ。結婚ができなかったんだ。あいつを見ればよく分かるよ。独り身であることの寂しさまぎれか犬を5匹もかっている。犬は反発もしないし、主人に従順だ。だから西城のような自由奔放なクレイジー女が存在するんだろう。
まあさらに付け加えさせていただければ旅行中は友達に犬を預けるそうだ。責任をとれないなら犬を飼うな。アホ。犬を飼うなら旅行に行くな。死ね。ひどいにも程がある。
天然を装って狡猾な所もある。俺の将棋のアマチュア四段の事実を知っていながら、それには触れず、私の意外な特技である手話を「椎名さん手話ができるんですってねえ」と高く評価してくる。そう言う偽善的な固定観念うざいんだよねー。どっちが大変か考えて分からない?
大変な方を評価しないで、手話も1年やっていれば誰でもモノになるし、あいつでも真似できることを敢えて褒める。将棋に触れる気ナッシング。結局認めたくないんだよ。自分より力のある人の存在を。
こないだ年甲斐もなく、B‘zの歌を口ずさんでやがる。
♪嫌いなら嫌いと合図して♪
本当不愉快だ。自分の孫にもあたる子供たちに媚びる生き方。でも西城も西城だけどあの歌詞も、女に合図してなんて頼むなんてよくよく考えたらきもくねえ?依存の発想?まあ中傷みたいになっちゃうから止めとくけど。
とにかく感情論で生徒のカリスマになって、それで自分を癒しているのかい?それで満足?ああもうイライラする。
とにかく部長が真剣に話を聞く気がないので僕は今晩ある事を決行する。あることを。
ふう、つかれた。死にたい。きるならきれ。僕は派遣社員か?騒音もうるさい。
そうか、今日は選挙の日か。行かなくてもいいか。今、次世代の党の車が家の前を横切った。次世代の党か。
次世代に生まれてくる赤ちゃんたちへ。どうかあなた達が生まれてくる時は幸せな家庭の元に生まれてきてください。
作品名:1、D.I.K日記(12月14日) 作家名:松橋健一