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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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宗教のおばちゃんとの勉強~キリストの存在 一~

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キリストが現れてから最初の勉強となる日、私はこの一週間の出来事をおばちゃんに話すことにした。

キリストを見ながら、心の中で、“言うよ。”という思いを伝えた。
キリストは微笑んでくれた。
そのほほ笑みを疑いながらも信じて私は口を開いた。

『先週、勉強が終わって、玄関でおばちゃんに、“神に話しかけてみてはどうですか?”って言われたので…。』
(タイトル;二度目、三度目と続き始めた宗教の勉強。~その三~ 参照。)
と私の話はまだ終わってないのに、おばちゃんは冷たく、
『言っていません。』
と言われた。
私は話の腰を折られたどころではなく、言うべき言葉が見つからなかった。
時が止まってしまったかの如く、何秒間か固まっていた。
キリストの表情をそっと見てみた。
首を傾げていた。

我に返れた私はもう一度、
『先週、玄関でおばちゃんが、“神に話しかけてみてはどうですか?もしかしたら神が何か答えてくれるかもしれませんよ。”と言ったの覚えてませんか?!』
と聞いたら、覚えてるか覚えてないかではなく、
『そんなこと言っていません。』
とイライラした感が含まれそう返ってきた。
私は頭の中に疑問符が、“???”と何個も出て来た。
おばちゃんは六十代とのことだったが、何でもかんでもきっちり覚えていないかもしれないと私は思ったので、おばちゃんの言葉は今は置いといて、私は続けた。
『覚えてないならいいです。』
と私は続きを話そうとしたら、
『そんなこと言っていません。私たちがそのようなことを言うはずはありません。』
と口を挟んできた。
おばちゃんのしている宗教ではあり得ないと言いたいのだろうか…。
おばちゃんの言葉を聞いていたら先に進まないので、おばちゃんの言い分を理解できないまま、その言葉に私は、“はい。”と笑顔で返事をした。
キリストの反応を見ると、そっと肯いたのが見えた。
そして私はそのまま続けた。
『最初は、白か黒かになったんですけど、その後、雲のような中に入ってしばらくすると雲の上に出たんです。そしたら遠くの方にキリストがいたんです。…本当にキリストはいるんですね!!私本当にいるとは思ってなかったので、感動しました。』
と言いはしたが、まだキリストが見えただけで、私自身、直接触れたわけではないので半信半疑な気持ちは隠したままそう答えた。
おばちゃんは、少し口を開けてポカ~ンとした表情のまま、ぎこちなく肯いた。
そのまま私は続けて、
『キリストは本当に人のために、仕事をしてるんですね。こんな風に手を動かして、私たち人のために、霊的食物を届けてるんですね。おばちゃんたちが教えてくれたことを本当にそのままやってるんですね。』
と私はキリストのマネをしながら、あたかも感動しているかの如く大げさにそう言った。さっきまではすぐに口を挟んでいたおばちゃんだったけど、何も言って来なかった。
私はもう一度、
『こんな風に霊的食物を送ってるんですね!!』
とマネをしたら、ようやくおばちゃんは我に返ると、私から目を反らし、
『していません。』
と言って、本やノートに手を伸ばし、勉強の用意を始め出した。
私は、“あれっ?!”と思った。
キリストからは、“霊的食物を送ってるんですよ。”とのことだった。
おばちゃんからも同じように習っていた。
“神やキリストが霊的食物を与えてくれる。”
二人の言い分は大体同じだ。
しかしキリストは、“神”とは言っていない。
そしておばちゃんは、“していません。”と来た。
どう考えたら良いのだろう…。二人の言い分ではどちらが正しいのか…と頭を過った。
キリストよりおばちゃんの方が正しいとおばちゃんは言いたかったのか…。
キリストの方を見てみた。
キリストの言葉が優しく聞こえた。
[キリスト];
『私は霊的食物を送る仕事を神から譲り受けたのですが…。どうしてでしょうかね…。』と言葉が届いた。
その言葉をおばちゃんには言わなかった。
言わなかったと言うより、受け付けないオーラと言うか威圧感が半端なかった。
キリストも、“言いなさい。”と言うわけでもなかった。

そして私は聞いた。
『では、キリストはこうやって手を動かしながら何をしてるんですか?!』
と聞いた。
それなら答えてくれると思ったからだ。
おばちゃんは相変わらず私の方を見ることなく、ノートに目を落としたまま、
『知りませんよ、そんなこと。…私はキリストについて証しするものではありませんからね。』
と冷たく言った。
私はビビってしまった。
私はキリストを見ながらおばちゃんに話しかけていたから、余計にビビってしまった。
今の言葉もキリストは聞いていたから、どんな気持ちかとか…
キリストは寂しそうに微笑んでいた。
今の一言で傷付いただろうなぁ~と思った。
なんとも言いようがなかった。
どうフォローしたもんかと…。
キリストの顔をガン見したところで、余計に切なさが伝わって来る気がしたので、チラ見してそっとしておいた。

“頑張れ!!キリストちゃん!!”

おばちゃんたちのよく言うセリフで、
“愛ある行動をしなければいけませんね。神やキリストのようでなければいけませんね。謙虚でなければいけませんね。”
とかあるけど、今のおばちゃんの行動はどれに当てはまるのかと考えた。
まっ、答えは出なかったけど…。