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さよならの前に

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3通め


すみません。

本当にごめんなさい。

死をもって償う他ありません。

私が死んだからといっておこさんが返って来るわけではありません。それは重々承知です。

それに私には家族も友人もおりませんので、悲しむものは誰もいないのです。




電車好きのおこさんでしたね。

私が運転していると、いつも決まって笑顔で手をふってくれました。


…どうしてこの世を去ったのが、私ではなかったのでしょうか。

どうして彼は、一番好きなものに殺されなくてはならなかったのか…。


ずっと考えていましたが、結局わかりませんでした。


お母様は、どうか御自分を責めないで下さい。

いつもいつもふっていてくれていたのに…どうして気付かなかったのか。


全て、私の責任です。




でも、もし、もし彼ともう一度天国で逢えたら…




やっぱり二人で電車に乗りたいと思います。






お母様はそれを許してくれますか?


作品名:さよならの前に 作家名:川口暁