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最後の孤島 第3話 『煙にまかれて』

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【倉野 比奈】(1)



 私は、日記を書いている。すでに日課で、テーマはすべて、この島で起きた出来事だ。
 この島に来てから、1ヶ月以上が過ぎた。日本の中学校では、もう2学期が始まっていることだろう。家族や学校のことが気になる。
 ただ、自分でも信じられないくらい、この島での暮らしに慣れ始めている。

 それはともかく、今回のテーマは、神殿にいるアンさんについてだ。あの女の人は、なんともいえない独特な雰囲気を纏っている。ただ、私はどうしても、あの人に慣れることができずにいる。もちろん、神殿での最初の出会いが原因だ。
 そこで、日記を書くことによって、あの人との距離を縮めたいと思っている。

「ヒナ〜!!! やってもらいたいことが見つかったよ〜!!!」

 ちょうど書く調子が乗ってきたところで、部屋にダニエルがやってきた……。自分から彼に頼んだことがあるため、日記を書くのを中断するしかない……。
 彼に頼んだことは、私でもやれそうなことを見つけてきてほしいということだ。バザールのバイロンさんへのお返しは、もう済んでいるため、私は時間を持て余せていたのだ。
 ここが日本なら、勉強に次ぐ勉強で、余る時間など無いだろうが、ここでは暇で暇でしょうがない。もちろん、スマホとネット環境さえあれば、時間などたちまち過ぎ去るだろうが。

 ダニエルとともに、私は部屋を後にする。日記の続きは、帰ってきたら書こう。



「私ができることって?」
市場を通り抜け、私とダニエルは、ジャングルの小道を歩いている。あちこちに、飛行機やボートで作られた家が建っていた。
「アンさんからの頼まれごとなんだけど」
彼はそう切り出した。アンさん関係なら、日記のネタにちょうどいい。
「その、ある人を世話してやってほしいということなんだ」
話し方がぎこちない。厄介者なのだろうか。
「どんな人?」
じきにわかることだが、今聞かずにはいられなかった。
「一応、ヒナと同じ日本人だよ」
「え?」
ずっと、この島にいる日本人は私だけだと思っていたので、驚くしかなかった。なぜ、今まで黙っていたのだろうか?
「……もうヨボヨボの年寄りなんだけどさ。ちょっと変わり者なんだ……」
先ほどよりもさらにぎこちない。厄介者であることは、確定した……。