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冬にわずらった病をなおすために

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頬の皮膚がただれて膿んだことがあった。
これこれこういう成分が効くであろうという話をとある人から耳にした。

川ぞいの道をのぼって。たどりついた先に一人のおんながいた。
これは漢方のようなものとおもって。とおんながわけてよこした薬をのんだ夜。
金魚の夢を見た。
蘭虫といわれる魚。と夢の中にいて思う。
水中にいるかのように。夢の中をふるふると泳ぐ。

起きてまたおんなの元をたずねた。
金魚とかそういうものではありませんけど。
顔をしかめていうのだった。
では何から抽ったもので。
癒えてしまえば何でもよいではないですか。

それきり口をきかないのである。
帰り道に寄った金魚屋で蘭虫の水槽をしばらく眺めてから帰った。

また夜に夢を見た。
自分の頬にあざやかな刺繍をほどこす人たちがいた。
次第に金魚のかたちをなしてゆくのを。
目をつむりながら感じている。
そういう夢をみていた。