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月とコンビニ
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拾っては、いけないもの。

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拾っては、いけないもの。
【著】①松田②山田【1周】
○登場人物【自由】
・明敏(あきとし)「トラック」
・倉史(くらふみ)「地図」
・住芳(すみよし)
・母 (はは)
○ページ数【自由】

【1】河原
 明敏と倉史は、週末に河原で開催されたバーベキューの片付けをボランティアで行っている。ビニール袋や空き缶、空き瓶などゴミが大量に散乱している。

●「明敏」「倉史」板付き。河原のゴミを拾っている。
明敏   ゴミは自分で持ち帰れってんだ。
倉史   去年くらいからか? この河原も酷くなってきたよな。
明敏   そうだな、前はここでサッカーしたり野球したりできたよなぁ。
倉史   この河原もバーベキューの規制しねぇかな。
明敏   おいなんだそれ。
倉史   あー、腐った……肉、か?
明敏   ひでぇな。あ、おいこんなんも。
倉史   Tシャツかよ、こいつどうやって帰ったんだ。
明敏   もうこんな掃除したくねぇやー。
倉史   しかたないだろ、強制ボランティアなんだから。
明敏   ったく、ちょーっとタバコ吸ったからってよ。
倉史   屋上ならバレないって言ったのはお前だろ。
明敏   まさか、先生が屋上であんなことしてるなんて思わねぇだろ。授業中だぞ。
倉史   ははっ、確かになっ。
明敏   あいつらも焦ってたな。
倉史   あした聞いてやろーぜ。『センセー、告白の返事は貰えましたかー?』ってよ。
明敏   はは! またボランティアさせられんぞ。
倉史   いやそれよりこれを弱みに……
明敏   お、これってあれじゃね?
●明敏は川の近くで紙の入った空き瓶を拾う。
倉史   なにかあったのか?
明敏   ほら、これ。
●明敏は空き瓶を見せる。
倉史   お、瓶の中に手紙入ってんじゃん。
明敏   ボトルメールってやつかな。
倉史   開けてみよーぜ。
明敏   ああ。
●明敏瓶を開け、紙を開く。
明敏   なんだこれ。手紙じゃないな。
倉史   『トラック』? それだけか。
明敏   これだけだな……。
倉史   なーんだ、手紙だったら面白かったのにな。
明敏   ま、バーベキューで誰かが酔ってゴミでも入れたんだろ。
倉史   ゴミだな。
明敏   ちょっとドキドキしたけどな。
●明敏は川の方に戻っていく。
倉史   おれもおれも! ボトルメールって会ったこともない人からのメッセージってことだもんな。
明敏   はぁ、ドキドキ損じゃねぇか! くっそ。
倉史   あはは、キレんなキレんな。
明敏   おー、っとぉーー? 倉史ー。
倉史   また何かあったのか?
明敏   へい、パス!
●明敏空き瓶を投げる。
倉史   お、また紙入ってんじゃん。
明敏   どうせまたゴミだろーけどよ、開けてみ。
倉史   わっかんねぇぞー?
明敏   もうおれのドキドキは盗ませねぇ。
倉史   はは、なんだよそれ。
明敏   いいから開けてみろって。
倉史   気になってんじゃねぇか。
●倉史空き瓶を開ける。
明敏   うるせぇっ。
倉史   はぁ、『地図』だとよ。
明敏   やっぱゴミか。
倉史   ドキドキしたのになぁ。
明敏   ちょっと楽しいな。もうないかな。
倉史   もういいもういい。さっさと終わらせようぜ。
★FC「暗転明転」
【2】河原の大掃除が終わり橋の上。
 明敏と倉史は河原の大掃除を終え、帰ろうとする。橋の上、倉史と明敏は帰り道が逆のため向かい合っている。橋から河原を見る。

明敏   今日は割と早く終わったな。
倉史   だいぶ片付いたんじゃね?
明敏   橋の上からみると綺麗な河原だな。
倉史   後ろは見たくねぇな。
明敏   あはは、そうだな。
倉史   明日はあっち側か。
明敏   さっ、帰るか。
倉史   じゃあな、また明日。
明敏   おう。
■音「トラックの走る音」
明敏   倉史! あぶねぇ!
●倉史の後方から迫るトラックから倉史を明敏が守る。トラックは倉史ギリギリを通る。
倉史   あっぶねぇ……さんきゅ明敏。
明敏   ああ、気にすん
●明敏はその場に倒れる。顔面に高速で石がぶつかり顔がグチャグチャ。
倉史   あ、きとし……? お、おい、大丈夫か!? 明敏!
     う、石が、石が顔面に……。トラックか! さっきのトラックが弾き飛ばした石か! 救急車! 救急車を!
★FO「ゆっくり暗転」
倉史   顔面が……ぐちゃぐちゃじゃねぇかよ……。

【3】倉史家。
 倉史は部屋で布団を被っている。

●住芳イリ、呼び鈴を鳴らす。母入り。
母    はいはい、お待ちください。
住芳   あ、すみません。私、学校の方から連絡をいただきました、総合カウンセリングセンターの住芳と申します。
母    あ、お話は伺っております。どうぞ。
住芳   失礼いたします。
●倉史の部屋の前まで行く
母    倉史、カウンセリングの先生が来て下さったよ。
倉史   …。
母    倉史。
住芳   お母さん。
●住芳、任せてくださいという感じ。
住芳   倉史くん、入るよ。
●住芳、部屋に入る。母、部屋の前で立っている。
住芳   初めまして、住芳です。
倉史   …。
住芳   いやでなければ、顔を見せてもらえるかな。
倉史   …。
●母、なんか堪らずドアを閉めてハケ。倉史、布団から顔を出す。
●住芳、露骨に嫌な顔をする。
住芳   ごめんね、聞いていたものとあまりに違っていたものだから…。
倉史   …。
住芳   改めて、総合カウンセリングセンターの住芳です。
倉史   はい。
住芳   …。
倉史   …。
住芳   少し、質問いいかな。
倉史   …、ええ。
住芳   見たの。
倉史   はい。
住芳   見たんだ。
倉史   …はい。
住芳   なんて。
倉史   …。
住芳   なんて。
倉史   地図って。
住芳   地図か。
倉史   俺は。
住芳   残念だけど、僕はカウンセラーだから。
倉史   明敏は。
住芳   カウンセラーだから。
倉史   どうすれば。
住芳   アドバイスくらいなら。
倉史   …。
住芳   やられるまえにやること。身の回りからそれを排除すること。あれの誘いに乗らないこと。いいかい。
倉史   …、やられるまえにやること。
倉・住  身の回りからそれを排除すること。あれの誘いに乗らないこと。
住芳   そう、そう。
倉史   …。
住芳   いいかい。
倉史   はい。
住芳   他に言えることもないし、おいとまさせてもらおうかな。長居すると吐いちゃいそうだから。もう会いたくもない。
倉史   …ありがとう。
住芳   これ、気休めだけど、どうしようもないときに開けなさい。
●住芳、バックから木箱を取り出して倉史に渡す。住芳ハケ。
●倉史、ボーっとする。
倉史   やられるまえにやること。
     やられるまえにやること。
     …身の回りからそれを排除すること。
身の回りから、それを…。(ぶつぶつ)
●倉史、部屋の中の本や教科書を投げ捨てていく。スマホも捨てる。
★段々と明かりが暗くなっていく。(時間経過的な)