二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

伊角の碁

INDEX|8ページ/8ページ|

前のページ
 

Love Love


 空を見上げれば、ただ青い空。
 そんな空間で生きていたいと、いつも思う。

「和谷らしいな」
 そんなことを言えば、いつも誰もがそう言って笑う。
 俺もその通りだと思う。

 ただ、そんな中でも色々どろどろとした感情だってある。

 たとえば、同じ門下の進藤と実力をあからさまに比べられたとき。
 たとえば、高校に行ってないことが犯罪のように言われたとき。

 ムシャクシャするし、腹も立つし、殴りかかりたくもなる。
 事実だったり偏見だったり、色々あるけれど、そんな些細なことで一喜一憂する。
 馬鹿だなぁと思うけど、どうにもならない感情。

 もてあまし気味なこの心は、もちろん表になんか出せない。
 出したら、そこで俺は負けだと思ってる。


 なんてことを、伊角さんが買ってきたビールを飲みながら喋ったことがある。
 アルコールは、一人暮しをはじめてから覚えた。伊角さんは困った奴だと溜息をつくけど、自分だって未青年なんだから説得力があろうはずがない。

 二人、何局か打って検討して、飯を食って、駄弁って。
 そんなときに伊角さんはいつも笑って言う言葉がある。

「和谷がいいと思うことをしたらいいよ。他人の言葉なんて、どうでもいいだろ?」

 とてもありがちな言葉だけれど、この人はちゃんと分かってくれている。そんな安心感をくれる言葉。
 だから、俺は自覚する。

「伊角さん、好きだな…」
 ビールを飲んで、笑って言う。
 一瞬きょとんとした顔が、ゆっくりと崩れる。
「ああ、俺も和谷のことが好きだよ?」

 でも、伊角さんは知らない。「好き」の本当の意味を。
 ただ、焦ることはないと、俺は知ってる。
 だって、俺も伊角さんも、一生、同じ道を歩む確信があるから。

 だから、ゆっくりと育てよう。
 俺がいいと思うことを、この気持ちを。
 いつか、伊角さんにも自覚してもらえるように。

作品名:伊角の碁 作家名:架白ぐら