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言の寺 其の弐

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Soundroid





産声の音程を
君は覚えているだろうか?

****

セカイが創生される以前

まずはじめに「C」が産まれた
光も水もない混沌で
最初の一音として鳴り響いた
時間の概念すら存在しない混沌のなかに
「C」はただただ存在し続けた

鳴り響く命 音
「C」は感覚と感情を備えた音性生命に違いなかった
抑揚のない混沌の最中にあってさえ「C」は

ときに悲しみ
ときに憤り
ときに笑い
そして絶望をした

悠久とはいえし感覚のなか
「C」は

「C」は強く願った
「孤独はいやだ」と

すると

「C」のアバラの波形が乱れ
そこから一筋の音が分かれて生じた

「D」だ

「C」と「D」は共に鳴り響いた

混沌がそれを聞いていた
まだ産まれていないセカイも
それを胎内で聞いていた

それはぎこちのない和音だった
決して美しいものではなかった
それでも「C」と「D」は共に鳴り続けた

愛という感覚もこのときにうまれた
それは必ず憎しみと対になっており
そうすることで支えあって存在している

永遠が10以上も終わりを迎えた頃に
「C」と「D」はそれぞれの自我を失いかけていた
もう消えてしまいたいと願った
音として鳴ることが苦しくって苦しくって仕方がなかった
それでも「C」と「D」は
存在しようと強く思った それは真摯な本能だった

眼を瞑って聴いていた混沌とセカイが感情を催す


「C」「D」の不協和音は
新たな音の震えを為した

こうして
「E」が「F」が産まれた

あとは立て続けだった
音が産まれ続けた
美しい和音も数限りなく生まれた

彼らは進化し続け
テンポやリズムを獲得し
音色のバリエーションを得て
「音楽」という集団になった

混沌はそれを聴いて
自分の役割が終わったことを悟る

「ある日」

「C」と「D」は多くの音を引き連れて
混沌の為に「音楽」を奏でた
混沌は音楽に看取られて
笑って消えていった

そうして

セカイが産声を上げた
音達がそれだ

『すべての産声の為』に
その音程と音色を定める為に
自分たちは存在し続けたのだ と
音達は自覚した

混沌の亡骸から
生命が誕生をする

生命は
音を聴くことが大好きだ

音もまた
生命に聴かれると嬉しい

「音を聴くための聴衆として生み出された」 という定義を
セカイだけが知っている

でも本当は
僕らもこころのどこかで
それを知っているんだ

だから音楽を聴くとたまに
泣いてしまうんだろう

作品名:言の寺 其の弐 作家名:或虎