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敵中横断二九六千光年2 ゴルディオンの結び目

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敵の備え



冥王星には必ず罠が張られている。しかしその罠とはどんな――。

艦長室で沖田はひとり考えていた。真田にもさっき言ったことだ。〈スタンレー〉には必ず罠があるはずだが、どんなものかはわからない。わかるようなら罠にならない、と。そうだ。敵はバカではない。地球人が基地を見つけて核で攻撃しようとするのはわかりきっているのだから、必ずそれを防ぐための策を幾重にも講じる。地球の軍はあの星に今まで近づけもしなかった。

だがこの〈ヤマト〉は、と沖田は思った。この〈ヤマト〉なら行けるだろう。そもそも、ワープでひとっ飛びだ。波動砲は撃てなくなるが、懐に飛び込むだけなら雑作もない。

後は星の丸みを使い、敵が来たら地平線の向こうへ逃げつつ反撃していけばよい。冥王星サイズの星は、砲の威力と船の速度で敵に勝る〈ヤマト〉には有利な戦場とも言える。星に取り付きさえできたら、そこから先は一方的に敵をバシバシぶっ叩いてやれるのだ。

やつらが〈ヤマト〉の装甲も貫くほどに強力なビーム砲台を百基も備えて星全体を要塞化しているなどというのは有り得ない。ガミラスがそんなことができるほどの敵なら、地球など八年前にひとたまりもなく丸焼きにされているだろう。やつらに無尽の兵力などない。さして力を持たぬがゆえにあんな遠くの小さな星に基地を建て、穴に隠れてそこから石を投げてくるのだ。一年前に逃げたわしの〈きりしま〉を追ってくるさえできなかった。

これまでの八年間の戦いが、このわしが身代わりに死なせた者らの犠牲が教えてくれている。ガミラスは決して対抗できないほどの敵ではないと。だからその懐に入り込めさえしたら――。

同じことは一年前の〈メ号作戦〉のときにも言われた。〈きりしま〉が冥王星の地に触れるほどのところにさえ行ければと。だがあのときも沖田は思った。同じことは敵も考えているはずだと――星の丸みを利用して地平線の陰に隠れようとするモグラがいるのなら、その死角を無くすためのなんらかの手を敵は打つ……。

それだ、と思った。冥王星にガミラスの罠があるならそういうものだ。〈きりしま〉ではそもそも星のそばにも行けず、先にどんな罠があるのか知ることすらできなかったが、しかし――。

冥王星。そこに潜む敵、ガミラス。やつらにはどうしても、地球人類を絶滅させねばならぬ理由があるのだろう。百隻ばかりの船では地球を攻めるに足らず、八年間の膠着(こうちゃく)が続く。その間に地球の水はジワジワと放射能に侵されていった。

やつらには一気に地球を攻めることも、新たに百の援軍を母星から送ってくることもできない。できるならばやってるだろう。ゆえにやつらはいま持つもので準惑星を護っているしかないのだ。

そうして地球の女達が、子を産めなくなるのを待つ。だからこそ、必ず罠があるだろう。いつか地球がこの〈ヤマト〉のような船を造り上げ、やって来るかもしれないときの備えとして、迎え撃つための罠が。

そこで〈ヤマト〉が沈むとき、人類存続の望みも絶たれる。そのときやつらはどうするのだろう。高らかに笑って正体を現し、地球人を殺しに来た理由を明かしもするのだろうか。冥土の土産にするがよいとでも言って。

沖田は古代が持ち帰った映像を画面に出してあらためて見た。タイタンで古代を襲うガミラス兵士。その姿は見る限り、地球人と変わらない。

こいつらはなんなのだ――あらためてそう思わずにいられなかった。一体なぜやって来たのか。なぜ我々を滅ぼそうとするのか。波動技術を完成した形で持つ一方で、それ以外ではなぜ地球に劣るのか。

そしてまた、と沖田は思った。どうしてこれほど地球人と似ているのか――。