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敵中横断二九六千光年2 ゴルディオンの結び目

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会敵



二機の〈ゼロ〉は地を這うような低空飛行を続けていた。高度計と速度計、方位計に眼を配りつつ、黒い雪の舞うトリトンの空をひたすら進み続ける。緊張を強(し)いられながらも単調なフライトだ。これに耐えるのもまた訓練――とは言え、あまりに何もないと、いっそ地面に突っ込んでゲームオーバーにしたくなる。これはあくまで仮想の空で、やってることはゲームと同じなのだから。

しかし、レーダーに山本機。これがついてくるのだから、好きなようにクルクルと宙を舞うことは許されない。もうこれだけで隊長なんてごめんだと思う。レーダーマップに古代はミッションエリアを呼び出してみた。基地を探して飛ぶべき範囲はまだタップリ残っている。

これが現実の作戦なら、敵になど決して会いたくないとこだろう。しかしそろそろ、出してくれないもんなのかな。どうせまさにゲームのように、そんなシナリオが組んであるのだろうから……。

こんなことを考えてはいけないのだろうが、考えずにいられない。妙なものだ。タイタンではまったく闘うどころではなく、逃げまわるしかなかったのに、こうしてたとえ仮想であろうと〈ゼロ〉のコクピットに収まると、敵を求めてしまっている。あのとき感じた恐怖も今はどこへやら。

これで今ふたたび目の前に十五の敵を出されたら、今日は勝つぞと飛び込んでさえ行くのだろうか。これは仮想だ。シミュレーションだ。ゲームと同じなのだから……山本に背を任せておいて、おれは攻撃に専念する。まず最初の獲物はお前だ。次にお前だ、お前だと、次から次に敵を撃墜。今日いちにちでトリプルエース……バカらしい。かつての候補生時代にそんな真似をやらかそうとしたならば、まず僚機を墜とされて孤立無援になったところをズタズタにされておしまいだろう。そして教官に吊るしを喰らい、貴様のせいで味方が全滅だ片腕立て伏せ左右五十回ずつと怒鳴られる。できない限りメシ抜きだ!

いかに〈ゼロ〉が今は完全武装でも、多勢を相手に勝てるわけない。なのにこの訓練か……冥王星で、仮想でなく、本気でこれをやれと言うのか? とても正気とは思えないが……。

そんなことを考えていたときだった。レーダーがエリアの隅に何か捉えて警報を出した。四機からなる〈不明機〉の編隊。

味方でないのなら、敵だ。

「来たな」

と言った。さてどうする。避けられるものであるなら避けるべきだが――。

無理か、と思った。敵はまっすぐこちらに向かってくる。すでに見つけられたものと考えなければならない。

また警報が鳴った。レーダーが、敵が何か発射したのを捉えていた。四機がそれぞれ二発ずつ、こちらめがけて射ってきたもの――長距離ミサイルに違いない。

なんだこんなもの、と思う。長距離だろうと短距離だろうと、宇宙戦闘機に対するにはさして有効な武器とはならない。自機をステルスの簑(みの)で隠し、誘導装置を攪乱(かくらん)する。そして迷子のミサイルをどこかにやってしまえばいい。

戦闘機の闘いは、かつて機銃の撃ち合いからミサイルの射ち合いに移行した。プロペラからジェットに変わったときの話だ。しかし今ではそれも変わり、再び〈ガン〉の時代になった。空中戦の勝敗は亜光速のビーム射撃によって決まる。

照準に捉えられたら助からない。銃弾よりミサイルより速い粒子の熱線に貫かれて機は墜ちるのだ。だからいかに敵のマトになるのを躱し、こちらが先に射止めるかの勝負だ。

ミサイルが向かってくる。しかしビームで狙い落とした。落としたが、敵もそれは承知で射ってきたようだった。古代と山本がミサイルを相手にしている間に距離を詰めてくる。四機が二機ずつに分かれ、それぞれ古代と山本を狙っているようだった。

しかし、と思った。こいつらは――。

古代の眼は一瞬にすれ違った〈敵〉の機体を見逃さなかった。このトリトンの仮想の空で、満月ほどの明るさの太陽光に照らされたもの。それはガミラスの機ではなかった。

『〈タイガー〉?』

山本の声が無線に入ってきた。そうだ。向かってきた四機はどれも、同じく〈ヤマト〉に搭載される地球の戦闘機〈タイガー〉だった。