ある引きこもりの推理2 紫陽花と友情
確かに、そうだ。有在のために人を殺すという考えが出てきたのは、もしかしたら思路にとっては当然のなりゆきだったのかもしれない。彼女としては、悩みどころだった筈だ。友人思いの思路にとって、友人の頼みを断ることは出来ない。だが、そのために人を死なせることはしたくない。だから、こうしたのだ。食中毒を引き起こすとは言え、どの程度が致死量なのかも詳しく分かっていないような紫陽花を使うことにしたのも、万が一のことを考えてのことだったのだろう。思路は決して私を裏切った訳でも、木村の味方をした訳でもない。彼女はただ、友人のためになることをしたかっただけなのだ。
大丈夫だよ、思路。私は全て、理解した。
電話越しにそう答えると、思路が息を呑んだのが分かった。
「そうか。……ありがとう。きっと、君がまた私の部屋に来るのは大分先の話になるだろうね。だから今のうちに、もう一度言っておこう。君は、私の大切な友人だ。何があっても、何をしても」
私も同じ気持ちだ、と、答える前に電話が切れた。
「……先輩、行きましょうか」
木村の静かな促しに、私は肯いて歩き出す。もう二度と、この優しい友人たちを傷つけるようなことはすまい、と心に決めて。
作品名:ある引きこもりの推理2 紫陽花と友情 作家名:tei