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月とコンビニ
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多重人格の死刑囚

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多重人格の死刑囚

【著】松田
○登場人物
レイノルド・クッキー……死刑囚
ヘンリー・マック……看守1、医者
シルコ・オールド……看守2、看護師

【1】監獄
 独房に死刑囚が座っている。その独房の前で看守と看守が話す。

●死刑囚板付き。
死刑囚   俺はやってない……。
●ヘンリー入り。
死刑囚   俺はやってない……。
ヘンリー   食事の時間だ。
●ヘンリーは食事を入れる。
死刑囚   俺はやってない!
ヘンリー   ……。
死刑囚   俺はやってないんだ!!
ヘンリー   うるさいぞ10376番!
死刑囚   俺は、やって……俺はやってないんだよ!
●シルコ入り。
シルコ   いつまで騒いでるんだ!
ヘンリー   死刑が決まってから2ヶ月。ずっとこうだ。
シルコ   頭がおかしくなっちまったか?
ヘンリー   よくあることさ。
死刑囚   おい、あんたら! 聞いてくれ!
ヘンリー   お前はやってないんだろ?
死刑囚   そうだ! 俺はやってない!
シルコ   殺人23件。強盗12件。器物損壊7件。
ヘンリー   凶悪犯だ。
死刑囚   俺じゃない! それは俺じゃないんだ!
ヘンリー   そうかもしれないな。
死刑囚   なら!
シルコ   いくぞ。
ヘンリー   ああ。
死刑囚   待ってくれ! 聞いてくれ! 俺はやってないんだ!
シルコ   こりゃ医者呼ぶしかねぇな。
ヘンリー   ああ、頭がおかしくなっちまってる。
●暗転


【2】診察室
 死刑囚は診察室で医者の診断を受けている。看護師は後ろで見張っている。

ヘンリー   やぁ、こんにちは。調子はどうだい?
死刑囚   ……
ヘンリー   ふぅ、そうかい。変わりはなさそうだね。
死刑囚   医者が俺に何のようだよ。
ヘンリー   私か?
死刑囚   後ろのこいつに言ってるように見えるか。
ヘンリー   ……ふむ。私は君の主治医だった。覚えているか?
死刑囚   主治医? 初めて会うんだ覚えてるかどうかなんて質問がおかしいな。
シルコ   先生。
ヘンリー   ああ。覚えてない。か。
死刑囚   なんだよ、その顔。
シルコ   レイノルド、落ち着いて聞いてください。
ヘンリー   いいかい。君は解離性同一性障害だ。
死刑囚   解離性……なんだ?
ヘンリー   所謂多重人格というものだ。
死刑囚   ……。
シルコ   君の中に何人もの人格が存在しているということです。
死刑囚   そんなん信じられるかよ。俺は今まで俺だったんだ。
ヘンリー   それが症状の一つなんだよ。
死刑囚   嘘だね! だったら俺はやってないんだ! 俺じゃない俺がやったことは裁けるのか!
シルコ   落ち着きなさい!
死刑囚   裁けるもんならやってみろよ!
シルコ   レイノルド!
ヘンリー   鎮静剤を!
●ヘンリーは注射器を取り出す。
シルコ   はい!
ヘンリー   抑えてろ!
死刑囚   やめろ! 大丈夫だ! 落ち着いた! 大丈夫だ!
シルコ   先生! 早く!
ヘンリー   今打ってる!
死刑囚   ……。
シルコ   落ち着いたようです。
ヘンリー   さて、レイノルド。君の疑問に応えよう。
死刑囚   俺はやってないんだ……。
ヘンリー   何をかね。
死刑囚   俺は誰も殺してない……なぜ死刑になるんだ。
ヘンリー   そうか、やってないのか。
死刑囚   そうだ、その解離性ってのは精神病なんだよな。
ヘンリー   ああ、そうだ。
死刑囚   だったら俺は死刑にできるはずがない!
ヘンリー   そうだな。
死刑囚   精神病院だ、俺は精神病院に入れられるべきだろう!? そうすりゃ死刑は先延ばしだ!
ヘンリー   レイノルド。ここが、精神病院だ。
死刑囚   ……え?
ヘンリー   どこだと思っていた。
死刑囚   そんなはずはない! 俺はさっきまで独房に!
ヘンリー   死刑囚としてか?
死刑囚   ああ、そうだ!
ヘンリー   どんな罪で?
死刑囚   殺人が……23件。強盗が12件……。
ヘンリー   凶悪犯だな。
死刑囚   俺はやってないんだ!
ヘンリー   という人格だとしたら?
死刑囚   え。
ヘンリー   君の中の他の人格が引き起こした事件。かもしれない。
死刑囚   なんだよそれ……。
ヘンリー   そう考えることもできるだろう。
死刑囚   そんなこと言ったら俺はどうなるんだよ……。
ヘンリー   安心しなさい。君は死刑囚ではない。
死刑囚   ……え? どういうことだ?
ヘンリー   事実だよ。君は人格など関係なく、死刑囚ではない。
死刑囚   もうなにがどうなっているのか。
ヘンリー   ここは監獄ではない。精神病院だ。
シルコ   さぁ、戻りますよ。
ヘンリー   そして死刑囚でもない。
死刑囚   ……。
シルコ   部屋まで連れて行ってください。
●シルコは診察室の外にいる警備員に死刑囚を渡し、死刑囚ハケ。
シルコ   先生、あいつはまだしばらくここに?
ヘンリー   そうだなぁ。
シルコ   やってないという人格でこの病院に収容されるってどんな気分なんでしょうね。
ヘンリー   考えたくもないねぇ。
シルコ   私も頭がおかしくなりそうになりますよ。ちゃんと私は私なんでしょうかね。
ヘンリー   さぁな。
シルコ   先生っ、酷いですよっ。否定してくださいよーあはは。
ヘンリー   あいつは、自分は死刑囚だとか言ってただろう。罪を犯したって人格が形成されてきてるんだ。
シルコ   え? というと?
ヘンリー   そもそも本当に多重人格だったのかねぇ。



作品名:多重人格の死刑囚 作家名:月とコンビニ