小悪党サンタクロース
台詞「骨が折れたかもしれない」
【著】松田
○登場人物
●男
●女
●警官
【1】裏通り
パンパンに膨らんだ白い袋を担いで裏通りを走り抜けていた二人組。袋を持っていた男は、ひったくりに突き飛ばされ袋を盗まれた。男は建物に力いっぱいぶつかり、うずくまり痛がっている。
●「男」「女」板付き。
男 骨が折れたかもしれない。
女 いいから取り返して来なさい!
男 む、無理だって。
女 せっかく手に入れたプレゼントなのよ!?
男 だって思いっきりひったくられて……。
女 クリスマスまで時間がないわ。
男 そうだよね。
女 子どもたちはお菓子を待ってるのよ。
男 サンタはいるって証明しなくちゃだよね!
女 ほらがんばんなさい!
男 わかった、がんばる!
女 さぁ取り替えしといで!
男 あっ……。
女 早くしなさい!
男 あいつ、どこ行った?
女 ……見失ったの?
男 あっはっは。
女 はぁ、もういいわ。
男 もう追いつけないや。
女 諦めましょう。
男 また盗めばいいしね〜。
女 まだ居眠りしてるといいけど。
男 同じ店に行くの?
女 ええ。
男 変えようよ!
女 なんでよ。
男 飴しか置いてなかったじゃんか!
女 そうね。
男 チョコレートが好きな子供だっているよ!?
女 じゃあチョコレートを置いてる店に行くわよ。
男 やったね!
●「警官」入り
女 取り敢えず大通りに出ましょうか。
警官 ちょっとすいませんね。
男 なんだい?
警官 警察なんだけどね。この辺りで強盗があったんだ。
●警察は手帳を見せながら言う。
女 えっ……。
男 お! 俺たちなんにも知らないよ!
警官 怪しい奴は見ませんでしたか。
女 な、なんにも知らないわ!
男 やばいよ!?
警官 やばい?
女 こ、怖いって事ですよ。
男 ちょっ、どうしよう!
女 黙ってなさい!
警官 もうじきクリスマスだっていうのにねぇ。
女 そ、そうですねぇ〜。
警察 いや、クリスマスだからなのかな。
男 プレゼントだったんだよ〜……。
警察 プレゼントを買うために銀行強盗か。それは、可能性として、アリだな!
男 銀行強盗?
警察 ああ、そこの銀行だ。
女 な、なんだ〜。
男 てっきりおれ達を追ってたのかと。
女 ちょっと!
警察 ん? 君たちなにか知ってるのかい?
女 何も。
男 ああ、何も。
警察 ……。
男 ああ、何も。
警察 ちょっと、身分証を確認させえてもらえるかな。
女 今は持ってないわ。
男 持ってないさ!?
警察 こんな裏通りで何を?
男 デートさ!
女 えっ、デートよ。
警察 君、腕をどうしたんだい? 痛そうだね。
女 転んだのよね!
男 ああ、転んだんだ。
警察 君たち、少し怪しいね。
女 行くわよ。
男 行こう!
警察 あ、待ちなさい。
男 わかった言うよー。
女 ちょっとっ
男 ひったくりにあったんだよ……。
警官 ひったくり?
男 あっちから走ってきて。
警官 強盗のあったほうじゃないか。
女 突き飛ばされたのよね。
警官 なぜ早く言わなかったんですか!
男 自分たちで捕まえようと……。
警官 どんなやつでしたか。
女 白い大きな袋を持っているわよ。
男 サンタクロースみたいなね。
警官 ありがとう。
男 俺たちのことはいいから! 警察さんは早くひったくりを!
警官 わかった! どっちにいった!?
男 あっち! 早く捕まえて!
女 がんばってください!
●「警官」ハケ
男 うまくいったね。
女 たまにはやるじゃない。
男 ねぇ、やっぱり折れてるかもしれない。
女 さ、チョコレートの店に行くわよ。
男 ……痛いだけかな……。
女 そのうち治るわよ。
男 そうかな。
女 そうそう。
男 ラジャ
女 また寝てるといいけど。
男 次の店で店主が寝てなかったらどうするの?
女 そしたらアンタの泣ける話で同情を貰いなさい。
男 それ、この前ダメだったやつだよ。
女 ならナイフでも包丁でもモデルガンでも使いなさいよ。
男 警察も忙しくなるね。
●「男」「女」ハケ
●「警官」入り。走ってる。無線が入る。
警官 ええっ? キャンディショップで盗みがあった!? 私は今ひったくり犯を追っています。他の人員を、銀行に送られた人員をあたってください。
●「警官」無線を切る。
警官 今日はなんて日だ。
●「警官」ハケ
完
作品名:小悪党サンタクロース 作家名:月とコンビニ