星空に、甘く、あたたかく。
【著】松田
○登場人物
・青年
・少女
【1】夜空
●キラキラした静かな音が流れている中で「少女」が歩いている。蝉の声などの音が混ざっていく。
その後に車の音などが混ざっていき、「青年」が望遠鏡を担いで歩いている。少女は騒音に戸惑いながら歩き、音は騒音になっていく。
●照明はどんどん暗転に近づいていく。
突如音は切れ、「青年」は望遠鏡をセットし、「少女」はその場に座り込む。
●照明は薄明かりの漏れる暗転。夜空のように。
●「青年」は夜空を見上げる。
青年 良い空だぁ。星がよく見える。
少女 ……
青年 落ち着くなぁ。
●「青年」は金平糖を口に含み、望遠鏡を覗く。「少女」は座って夜空を見てる。
青年 ……
少女 おじさん、何してるの?
青年 少し肌寒いな。
少女 ねぇ、おじさん。
青年 ……ん?
少女 何してるの?
青年 え、なんでここに。君一人かい?
少女 うん。
青年 お母さんかお父さんは?
少女 (首を傾げる)
青年 ここで何してるの?
少女 (空を指差す)
青年 そう、一人で来たのかい?
少女 うん。
青年 どうしようか……お家はどこなの?
少女 (首を傾げる)
青年 困ったな……。
少女 何してるの?
青年 ん、あぁ、星を見てるんだよ。
少女 星?
青年 ほら、空にいっぱいキラキラしてるでしょ?
少女 綺麗だね。
青年 うん。
少女 私も見てたよ。
青年 ずっと?
少女 ううん。
青年 ……
少女 ……ねぇ、おじさん。
青年 おじさんかぁ、お兄さんって呼んでよ。
少女 お腹すいた。
青年 えぇ? んー、金平糖しかないけど
少女 金平糖?
青年 うん、これ。
●「青年」は金平糖をポケットから出す。
少女 食べていいの?
青年 うん、あげるよ。
●「少女」は金平糖を食べてみる
少女 おいしいっ
青年 金平糖知らなかったんだね。
少女 甘いねっ。
青年 気に入った?
少女 うんっ。
青年 全部あげる。
少女 ありがとうっ。
●「少女」金平糖を食べて、一粒摘んでニコニコする。
青年 どうしたの?
少女 星みたい。
青年 あはは。
少女 でもこっちは可愛いね。
青年 うん、そうだねぇ。似てる。
少女 どうしたの?
青年 ん?
少女 寂しそう?
青年 僕も小さい時同じこと思ってたなぁ。
少女 金平糖?
青年 うん。小さい時、爺ちゃんとここに来てたんだよ。金平糖貰って星を見てたんだ。
少女 金平糖好きなの?
青年 うん。これを覗く時は食べたくなってね。
少女 ねぇ、おじさん。
青年 おじさんかぁ。
少女 それなぁに?
青年 これ? 望遠鏡って言ってね、星がおっきく見えるよ。
少女 ……
青年 見てみるかい?
少女 うんっ!
●「少女」望遠鏡に寄っていき、覗く。
青年 どう?
少女 すごぉい!
青年 見てていいよ。
少女 うん!
●「青年」は空を見ながら。「少女」は金平糖を食べながら望遠鏡を覗く。
青年 星が好きかい?
少女 うん。綺麗。
青年 僕も好きだなぁ。
少女 でも夜しか見れない。
青年 星はね、夜になると僕達を見守ってくれてるんだよ。
少女 そうなの?
青年 うん。お爺ちゃんやお婆ちゃん、ひい爺ちゃんもひい婆ちゃんも星から見守ってくれてるんだよ。
少女 星ってすごいねぇ〜。
青年 ね〜。
少女 おじさんのおじいちゃんも星にいるの?
青年 うん。きっとね。
少女 心配なのかなぁ?
青年 そうなのかなぁ。
少女 絶対そうだよっ。
青年 お母さんもお父さんも、心配してるかもしれないよ?
少女 ……
青年 少し寒くなってきたね。
少女 ううん。
青年 風邪引いちゃうよ。上着持ってくるね。
少女 どこにいくの?
青年 車だよ。すぐ戻ってくるから待ってて。
少女 うん。
青年 ……
少女 おじさん。
青年 なんだい?
少女 ありがとうっ。
●「青年」ハケ。「少女」望遠鏡を覗きながら。
少女 ……良かったねぇ、おじいさん。これからも、ちゃんと見守っとかなきゃねぇ。
●「少女」ハケ
●望遠鏡のところがスポットライトのように、一筋の光の柱になってる。
●「青年」入り
青年 上着持ってきたよ、ちょっと大きいけど……あれ? どこいったー?
青年 ……ん?
●「青年」光に気付く。望遠鏡に貼ってある紙を見つける。
青年 ん、張り紙? 『ばいばい、おじさん。帰るね』
●光に手を当ててみる。丸い光が手のひらに降りてきて光が消えたら金平糖が手のひらにある。
青年 金平糖……
●「青年」は金平糖を食べ、望遠鏡を覗く。
作品名:星空に、甘く、あたたかく。 作家名:月とコンビニ