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CROSS 第21話 『Lieutenant』

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第1章 セクショナリズム



   第21話 『Lieutenant』

【時間軸】…異次元暦42734年 1月5日
【場所】…通称『ピップ(Pip)』(『ガンダムSEED』の世界)
       パナマ 大日本帝国連邦大使館(旧総領事館)



「我々海軍は陸軍が嫌いでね。とくに、君たちCROSSの人間は大嫌いだ」
いかにも嫌そうな口調でその男は言った……。それに対し、相手は、
「逆に、我々陸軍は海軍が嫌いです。とくに、現場を知らない事務屋は大嫌いですよ」
と言い返した……。新年早々、不穏な雰囲気である……。

 最初に喋った男は、海軍出身の大日本帝国連邦大使だ。そして。言い返した人物は、CROSSのヘーゲルだった……。彼の後ろには、佐世保と上社がいる。
 大使は、お決まりの白い軍服を着用し、大使であることを示すバッジを胸につけていた。
 ヘーゲルたちがここに来たのは、山口探しでプラントに侵入するためだった。この大使館には、プラントに残っている旧大使館への転送装置がある。それに、治外法権を活用できるので、ここを経由したほうが安全だ。

「言葉に気をつけろよ? 今、この大使館にいる陸軍の人間はおまえらだけで、海軍の兵隊がたくさんいるんだからな?」
大使は、脅す口調でそう言ったが、ヘーゲルたちは平然としている。その大使は痩せ形で、一目でデスクワーク派とわかる見た目だからだ……。
「山口さんなら、あなたたちのことをこう言いますよ。『おまえらは、陸に上がった魚だ』とね。やろうと思えば、我々CROSSがこの大使館を制圧することだってできます。試してみますか?」
ヘーゲルの後ろで、佐世保が通信機を触りながら脅す……。

 確かに大使館には、警備のため、海軍の陸戦隊の1個中隊の兵士たちが駐屯していた。しかし、戦車や航空兵器は無く、歩兵装備しかなかったので、CROSSを呼び寄せれば、制圧(もちろん、適当な正統理由を掲げてだが)することは可能であろう。

 佐世保の脅しを聞いた大使は、鼻を偉そうに鳴らし、
「奴はまだ生きているのか? ウチ(海軍)の情報部の話だと、捕虜になって、プラントのどこかで、コーディネーターのエサを作っているという話なんだが? 我々海軍の人間は、捕虜になるぐらいなら死を選ぶ!」
そう言うと笑い始める……。このとき、ヘーゲルと佐世保は、いつかコイツを殺そうと決意した……。