宗教の勉強後のお母さんとの電話。~その一~
の後の話。
おばちゃんが帰った後、しばらく玄関に立っていた私は我に返るとお母さんに電話した。
先ずは、勉強の話からだった。
今までのお母さんは勉強の内容に期待を持って電話に出ていたけど、
『あなたの勉強は今まで聞いてきた人たちと違う。でも、違う意味で面白い。』
という理由で、毎回電話を楽しみにしていた。
『今日はみ使いについての話から始まった。』
と言うと、お母さんは知っているので返事をする程度だった。
『み使いはどんな姿をしているのか聞いたら、本の挿絵を見せられて、羽の生えた四十代くらいのおじさんの絵だった。…これがみ使いですかって聞いたら、おばちゃんは“この人の姿に似たものがみ使いです”って答えた。』
と言ったら、
『お母さんもそう習ったよ。その挿絵も見たし、“これがみ使いです”って教えられたよ。』
と知っていて当然といった感じでお母さんは答えた。
『おばちゃんにみ使いは男で羽が生えてるんですねって言ったら、“はい、これがみ使いです。本物のみ使いに羽が生えているかは分かりませんが、この挿絵を描いた人がもしかしたら描き足したのかもしれませんね。この絵を見る限りヒゲが生えているので男性のようですが、み使いが男性か女性かは分かりません。”って答えたよ!!“これがみ使いです”って言ったのに、その後の説明で、“分かりません”って言われた。答えはどれ?!』
とお母さんに詰め寄るように聞いた。
お母さんは信じられないのか、
『えーーーっ!!』
と叫んでいた。
お母さんが落ち着くのを待った。
『えーーーっ、そんな教え方聞いたことないよ。誰もあんたみたいに突っ込まないのもあるかも…。』
『でもお母さんが何でも聞いていいって言ったし、私は科学的に知りたいっていうのもおばちゃんには伝えてあるし、おばちゃんもそれは承諾してくれてるし…。それなのに質問したらダメなの?!』
『いやいや、そうじゃなくて、質問も科学的に知りたいのも良いと思うよ。お母さんが言いたのは、“これがみ使いです”って言った後に、“分かりません”って言うことが信じられないって言いたいの。断定したのに分からないって…。それで驚いたの。』
お母さんの言い分に納得すると、私は続けた。
『それで私は納得した覚えはないのに、おばちゃんは“み使いについてはよろしいですね。み使いについては理解したので、次の質問文にいきたいと思います。”って少しキレ気味でそう言ってみ使いの姿の話は終わった。どうしたらいいの?!』
と私は説明した。
お母さんはめちゃくちゃ困ってるようで、唸り声だけが聞こえた。
『その人本当は分かってないんじゃない?だってそうとしか思えないから…。お母さんに勉強を教えてくれてる人に聞こうかとも思ったけど…、もっと説明出来ない気がした…。どうしよう…。』
『えーーーっ!!お母さんがそんな事じゃ困る。お母さんが良いって言うから始めたのに、その答えはダメだよ~。』
と私も困りだした。
『それは分かってるから、勉強は続けて。』
との答えだった。
でも、そうと言いながらも電話の向こうでお母さんも困ってるのを感じた。
まだ他にも勉強の内容を話したいので私は話を変えた。
『それと陣営の話もした。』
と言ったら、お母さんから伝わる拒否感の空気が半端じゃなかった。
『それで、どんな話だった?!何かお母さんも信じられなくなってきた。』
と溜息混じりにそう言った。
『陣営とは神から出ている幕のようなもので、人はその幕によって守られているって。』『お母さんもそう聞いた。』
とぶっきらぼうに答えた。
『で私が、おばちゃんたちのように、神の存在を証すものの人たちの周りには、この幕はあるんですか?!って聞いたら、“どうでしょうかね~。あるんでしょうか…。私はあると信じていますけど、神の幕があるといいですね。”っておばちゃんは輝いて答えた。人を守っているって言ったのに、その後、“あるといいですね”よ!!意味が分からない。』
と納得出来ていない思いを込めてそう言った。
『お母さんは今まで言われたことを信じてきたけど、あなたの言う言い分を聞いたら、お母さんもおかしいと思い始めた。』
と言い出した。
『お母さんがそれを言ったらダメだよ~。お母さんが進めて来たのに…。』
『いやいや、そうじゃない。…そうじゃなくて、このままもう少し勉強を進めてみようよ。お母さんもおかしいと思い始めたから、勉強の時は鵜呑みにせずに納得出来ないなら信じないで、あなたのように聞けたら聞いてみる。…ちょっとこれでやってみようよ。』
と恐ろしいかは分からないけど、そんなことを言い出した。
お母さんが言うなら私はそれに一応従ってみようと思った。
面白いならいっか~という感じで…。
作品名:宗教の勉強後のお母さんとの電話。~その一~ 作家名:きんぎょ日和