二度目、三度目と続き始めた宗教の勉強。~その一~
先週の豹変した冷たい表情とは打って変わって、何事もなかったかのようにニッコリ輝いた表情で登場した。
“先週の出来事を覚えているのは私だけ?!”
“おばちゃんは何も気付いてないのだろうか…。”
と思いが過った。
でもお母さんに言われていたので、そこはお母さんを信じて先週同様家へと招いた。
勉強して欲しいというお母さんの思いもあったので…。
おばちゃんは部屋に入ると荷物を下ろしながら、
『この一週間どうでしたか?』
といつもの言葉が飛んできた。
私は飲み物を用意しながら、
『変わりはないです。』
と答えた。
『では、何かを見たりとかは…?』
『この一週間はないです。』
と答えた。
『それは良いことだと思います。』
とおばちゃんは言った。
私は初めの頃におばちゃんに話した話(タイトル;“二度目の訪問”を参照)を思い出したので、そのことを言った。
『初めの頃にぬいぐるみと電子レンジの話をしたんですが、ぬいぐるみを捨てた後に電子レンジが壊れたと…。』
おばちゃんは聞きながら覚えていたようで、相槌を打ちながら聞いていた。
『で、その段ボールに入っているのが、その時の電子レンジです。』
と伝えるとおばちゃんは、
『まっ!!』
と驚いて段ボールを見ていた。
『捨てようと思ってるんですけど、その方がいいですか?!』
と聞いたら、
『はい、そうです、そうです、捨てたほうが賢明だと思います。』
とはっきりそう断定してくれた。
『分かりました。では、捨てます。』
『そうです、そうです、捨ててください。』
ともう一度おばちゃんは言った。
こんな風にはっきりと言ってくれる時もあるから、私はこの宗教の人たちは凄いな~と思った。
神様やキリストに聞いたとしても同じ答えを言ってくれたのだと思った。
たまに安心が起こるので、やっぱり勉強を続けたほうがいいのかもと思ってしまう。
そしてお祈りをして勉強が始まった。
『では、今日はみ使いについて勉強しましょう。み使いとはどんなものか分かりますか?何をしますか?』
とおばちゃんの質問が来た。
『み使いは神の子どもで、人を助けます。その数は何億もいます。』
と私は本に書いてあることをそのまま言った。
案の定、おばちゃんは、
『まあ、素晴らしい!そうですね、み使いとは神の子どもであり、数えられないほどのみ使いたちが、私たち人を助けてくれるんですね。』
と大袈裟に褒めてくれた。
『そして、そのみ使いたちはどこにいますか?』
『地上にいます。自分たちの周りにもたくさんいます。』
と答えたら、
『そうですね、地上にたくさんいるんですね。』
と輝いた表情でおばちゃんはそう言った。
おばちゃんは続けて、
『どうですか、分かりましたか?み使いとは何なのか分かりましたか?』
と聞いてきたので、私は疑問をぶつけた。
『み使いを見たことはありますか?!』
『み使いを見たことはありません。み使いは人には見えませんからね。』
『神やキリストはみ使いを見たことはありますか?!』
『はい、もちろん。神がみ使いをお創りになったのですから、見たことはありますよ。み使いを創造する前に、キリストは創造されたので、キリストもきっとみ使いを見たことがあるに違いないと思いますよ。』
と丁寧で優しい口調でそう言った。
どうしてだろう腑に落ちない感じが否めない。
でも私は我慢した。そして私は質問を続けた。
『み使いはどんな姿をしているんですか?!』
私の質問におばちゃんは嬉しそうに、
『そう思ってしまいますよね。本の次のページを開いてください。』
とおばちゃんは期待を持たせるような言い方でそう言った。
私は見えないものの姿を一つでも知ることが出来る~と心の中で叫んで、
『み使いの姿が分かるんですね。』
と言った。
おばちゃんは嬉しそうな表情のまま私が次のページを開けるのを待っていた。
そして次のページを開けた。
おばちゃんは、
『ここにライオンと人とその後ろに人の姿に似たものが描かれていますね。』
とどうだと言わんばかりの表情でそう言った。
『…はい…。』
と私は、ただの挿絵に落胆した。
『この人の姿に似たものがみ使いなんですね。』
とおばちゃんは輝いてそう答えた。
『これがみ使いですか…。この男の人がみ使いですか…。み使いには羽が生えてるんですね。』
と私は言ったけど、どう見ても見た感じ四十代のおじさんにしか見えなかった。
私の落胆に気付かないのか、おばちゃんは笑顔のまま、
『はい、これがみ使いです。本物のみ使いに羽が生えているかは分かりませんが、この挿絵を描いた人がもしかしたら描き足したのかもしれませんね。この絵を見る限りヒゲが生えているので男性のようですが、み使いが男性か女性かは分かりません。』
と爽やかにそう答えた。
私はただただ驚いて、
『えーーーっ!!それでいんですか?!そんな答えでいんですか?!』
と叫ぶように聞いた。
するとおばちゃんの表情が豹変して、冷たい視線で、
『いんですよ。私は神を証すものですからね。』
と答えにならない答えを早口で言ってきた。
私が納得出来ずに、その挿絵を凝視していたら、
『み使いについてはよろしいですね。み使いについては理解したので、次の質問文にいきたいと思います。』
とおばちゃんは勝手に終わらせ次の質問文を見始めていた。
私がまだみ使いの挿絵を見ていると、
『もうそこは終わりました。次の質問文にまいりたいと思います。』
と冷たく言うと自分の腕時計で時間をチェックした。
そう言えば、先週もおばちゃんはちょこちょこ腕時計を見ては時間を気にしていたなぁと思い出した。
そして私の勉強なのにおばちゃんのリズムで次の質問文に進むのだった。
作品名:二度目、三度目と続き始めた宗教の勉強。~その一~ 作家名:きんぎょ日和