ついに勉強が始まった。 ~その二~
『では、悪霊たちはどのようなことを人間にしてきますか?どのようなことをしてくると思いますか?』
『占いとかです。』
と私は答えたけど、答えは本の中に書いてあるので、そう考えなくてもその答えが出るような仕組みに作られているので初心者の私でも答えられるというだけのこと。
そしておばちゃんは私の答えに、必ず驚いて大袈裟と言えんばかりに、
『まあ、素晴らしい!そうですね。その答えは大変素晴らしいと思います。』
と褒めてくれる。
『では、占いとはどういったものでしょうか。考えてみましょう。』
とおばちゃんは言った。
これも本に書いてあるので、
『タロット占い、手相判断、カラー占い…とかあります。』
と私は答えた。
案の定おばちゃんは大袈裟に褒めてくれた。
そしておばちゃんは言葉を続けた。
『悪霊の行いの一つに占いというものがあります。占いは人を惑わすんですね。人を間違った方向に導いたり、神が与えてくれた自由意志があるのに占いで人をコントロールしようとするんですね。それとまだあります。それは死者と会話をすることなんですね。これが一番怖いことなんです。死んでいる者と話をすることは出来ないんですね。あなたがお母様の家で見たものと会話をしてはいけないんですね。そういうものから離れなければいけません。それは全て悪霊たちが作った偽りなんです。』
『はい。悪霊たちが神を恐れているということもお母さんの家で見たので分かりました。聖書をその子に見せたら嫌がったので、この本が怖いというのも見たので分かりました。』
おばちゃんがまた褒めてくれるかと思っていたら、作り笑顔のまま固まって一瞬間があってその後小さく、
『(はい)』
と返事をしただけだった。
私は“なぜ?!”と疑問に思い言葉を足した。
『私が歌っても嫌がったので分かりました。歌詞が悪霊たちにとって聞きたくない言葉なのか理由は分かりませんが、嫌がる姿を見たので何かを嫌がるというのは分かりました。』
おばちゃんは固まったままだった。
待っていたら、おばちゃんが口を開いた。
『ええ、ええ、悪霊たちは嫌がります。神を恐れるので嫌がります。』
と表情は固まったまま、何処を見てるか分からない目でそう言った。
私は答えが合っていたので嬉しくなって、
『やったー!そうですよね!神様の力はすごいですねっ!!』
と喜んでそう答えた。
『はい。神の言葉は生きていますからね。』
と言いながら目の視点が合っていき、こっちを向いてくれた。
そして私が気になっていたことを聞いた。
私がお母さんの家に帰っていたのは、犬が死んでしまったからだった。
その辛さに、彼氏が、
『一度お母さんのところに帰って、遊びたいだけ遊んでおいで。』
とのことで帰ったのだった。
そして、お母さんの方の宗教の人の話では、
『人は死んでからその後復活する。』
と聞いていたので、犬とまた会えるのかを聞きたかった。
お母さんからは、
『この宗教の人たちは救ってくれるから大丈夫。』
と聞かされていた。
なので私は聞いた。
『お母さんの勉強の人から聞いたんですけど、復活があると…。』
その言葉を聞いたおばちゃんは目を輝かせ、
『まっ、そんなことまで知ってるんですね。』
と言った。
『はい。それで犬が死んでしまったんですけど、犬も復活しますか?!』
と聞いたら、低いトーンで、
『しません。』
と即答だった。
私はあまりのショックに泣きそうになった。
神様は救ってくれるんじゃなかったの…と裏切られた思いが半端じゃなかった。
お母さんの言葉を信じてたのに~…。
宗教のおばちゃんたちは、
『私たちは、神やキリストのようでなければいけませんからね。』
と何度も何度も言い続けていたのに、地獄に叩き落とされたように感じた。
神やキリストはこんな風に叩き落とすのかと思った。
救うってなんだろう…と心にその言葉が漂った。
言葉が出なくなって私が黙っていたので、おばちゃんが話し始めた。
『動物は復活しませんが、人間は復活するんですよ。神は救ってくれるんですよ。聖書には復活するのは“人”としか書いていませんから、犬は復活しないんですね。』
と優しく言われたけど、その言葉は心には届いてこなかった。
おばちゃんには私のショックが伝わっていないのか、ニコニコしていた。
この日の勉強はその後ほとんど頭に入らなかった。
勉強が終わってすぐお母さんに電話した。
お母さんは良い結果を想像していたようで、テンションが高かった。
おばちゃんの豹変ぶりな姿を説明をしたら、声が険しくなった。
『えー!!そんなことある?!その人本当に宗教の人?!そんな人はいないはずだけど…。おかしいよその人。』
と言うので、こっちが経験した話とか詳しく話したら固まることも説明したら、
『そのおばちゃん、自分の答えより上に超えられたら嫌なんじゃないの。プライドが傷付くのかも…。』
と言った。
『えっ?!どうしたらいい?!こっちの勉強なのに相手に気を使えとかするの?!そしたら何のための勉強か分からなくなる。』
『いい、いい、気を使わなくていい。その人に合った人が現れるはずだからそのまま勉強してみて。あんたに合った人だと思うから。』
と言われた。
そして犬の話も伝えた。
『えーーーっ!!そんなことする人はいないはずなのに…。救ってくれるはずよ~。信じられない。本当にそう言ったんだよね?!』
『うん。』
と私は返事をし、もう一度説明した。
お母さんの驚きようはすごかった。
『そんなこと言うかなぁ~。でもそのおばちゃんは言ったし…。相手が辛くなることは絶対にしないから信じられないわ~。…ちょっとそのおばちゃんおかしいと思う。しばらく我慢して勉強続けて合わないと思ったら相手を代えてもらって。普通はその人に合った人が来るはずなんだけどなぁ~。』
とお母さんは腑に落ちないという感じだった。
そして、お母さんの言葉を信じ私は続けることにした。
作品名:ついに勉強が始まった。 ~その二~ 作家名:きんぎょ日和