『 魔物と人々 』
昔むかし、魔物が存在していたそうな。
それはなんでも、この国の人々を食らいつくし、終いには死に追いやる恐ろしい魔物で、誰もかれもが恐れていたという話だ。子供などは決してその目を見てはいけない、見たら最後、目は潰れ死ぬまで祟られると教えられ、皆、身の毛もよだつ思いで生きていたらしい。
爺様から伝え聞いただけであるので、それが一体どのような様相でどのように人々を襲っていたのかを知るわけではない。この国の勇気ある若者強者は皆、魔物を退治するために立ち上がり、息の根を止めるべく追跡と研究を重ね、作戦を練ったそうだ。
もう少しで息の根を完全に止めることが出来ると国中が沸き立ったその時、魔物は爆発したそうだ。残念な話だ。その頃には、魔物は何体にも増えていたという話で、国は仕方なく魔物を封印することにしたらしい。これには幾つもの国が協力し、町は閉鎖されたという。
そんな魔物、どうして息の根止めなかったのさ。
そうだなぁ、たぶんそれは皆、明かりが欲しかったからだろう。
明かり?
お前は、奴らの放つ光を知らんから分かるまい。
昔むかし、魔物は太陽だったらしい。
封印のその後の話は、爺様が墓場まで持っていってしまった。
寒くなってきた。そろそろ火を起こす時間だ。