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夢と少女と旅日記 第7話-2

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 L.E.1012年 6月1日

 今朝はいつも通り、ローラさん、サンデーさんとその他妖精たちと会って、エターナルドリーマーの情報を得ました。私はその情報を基に夢魔退治へと向かいました。そこまでは普段と変わりません。
 夢の世界は、なんてことのない普通の家があるだけでした。それ以外の建物は風景として見えるだけで、入ることは愚か近付くことさえできなかったのですが。
「ということは、この家の中にメアリー・スーと夢魔がいるわけですね。今回は楽そうですね、ネルさん」
「戦うのは私なんで、あんまり気楽に言わないで欲しいですけどねえ……。まあ、とりあえず入ってみましょうか」
 私は家のチャイムを鳴らし、「ごめんくださーい」と呼びかけてみました。しばらく反応がなかったのですが、二度目のチャイムでその家の住人と思しき人が扉から顔を出しました。
「はい、なんの御用ですか?」
 物静かそうな、悪く言えばなよっとした男の人に不機嫌そうに言われましたが、多少強引にでも家の中に入らなければいけないと思いました。
「私、美少女旅商人のネル・パースと言います。こっちは非常食のエメラルドさん」
「非常食!? せめて“妖精の”って言ってください!」
「実は私たち、このたび訪問販売を始めまして、何か入用のものはないかなあと思って、訪ねさせてもらったのです」
「はあ。じゃあ、特に必要なものはないので帰ってください」
「いえいえ、そう言わずに! 日用品はもちろん、武器やら防具やら珍しいものまで揃ってますし、どんな難病にでも効く薬なんてのもありますよ。
 しかも、今なら一般市場に出回っているものの3割引でご提供させていただいております」
「今なんて……?」
「はい! 今なら3割引なので、大変お買い得で――」
「そうじゃなくって」
 薬が欲しいんだ、彼はそう言いました。ここで彼が食い付いてくるのは計算通りでしたが、私は何も知らないかのように問い返しました。
「どなたかご家族に病気の方でもいるんですか?」
「妹が病気でね。絶対安静にするように言われているんだ」
 現実の世界では、彼の妹は既に死亡しています。これは事前に調査して分かっていることでした。病気で妹を亡くし、そのショックで傷付いた心を夢魔に狙われた。だとするならば、その妹こそが今回の夢魔としか考えられませんでした。
「では、その妹さんの病状によってはより良い薬をご提供させていただけるかもしれませんので、一度会わせていただけませんか?」