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ドーセ・オレナンテ
ドーセ・オレナンテ
novelistID. 53330
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少しは考えてください

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ぼくはいま何時か人に聞かれたらキリンオレンジと答える年齢だ。
ある日ぼくは妻に「少しは考えてください」と叱られた。五歳になる子供の誕生日をお祝いするのに、クレジットカードでお金を使いすぎたからだ。
少しは考えてくださいーこの言葉を聞くと、ぼくの頭上に巨大なクエスチョンマークが浮かび上がる。ゴーゴンみたいなバカっぽい蛇のかつらをかぶせられて、天空の城から空中へ放り出されたような気持ちになる。
少しは考えてくださいーぼくは昔からこの言葉が大嫌いだ。高校生の頃、体育館で生徒総会が開かれたときのことだ。会場は騒がしくて収拾がつかなかった。進行役の男子生徒は完全に頭にきており、舞台上でマイクを握りしめて、喧々諤々の会場へ向けて「少しは考えてください!」と連発していた。しかし全く効果がなかった。彼はまるで、息を切らせてダッシュしたのに電車に間に合わなかった人みたいだった。のど飴をかみ砕きたいのを我慢して最後までなめきったのに、少しものどがよくならない人みたいだった。
「少しは自分の頭で考えろ」
これは上司が部下によくいう言葉だ。世の中の上司たちは、気の向くままにこの言葉を発している。上司たちは、この世界に巨大なクエスチョンマークの山を築いているが、そのことに気がついていない。そしてどんどん嫌われていく!
少しは考えてくださいー石英に刻まれた遠い宇宙からのメッセージ。ぼくの妻や進行役の生徒や世の中の上司たちのように、この言葉を使う人が相手に考えてほしがっていることは、結局は自分の気持ちなのだ。彼らは自分の気持ちを汲み取ってほしいと金切り声をあげている。だから、それを付け加えて解釈すれば謎が解ける。例えば、「家計をきりもりするわたしの気持ちを少しは考えてください」とか、「進行役のぼくの気持ちを少しは考えてください」とか、「おれがお前にどうしてほしいと思っているのか、おれの気持ちを少しは考えろ」とか。