セレモニー
明り取りと呼ぶには小さすぎる窓。
膝丈ほどの子供すら通れないそれにさえ、格子がはまっている。
鼻に纏わりついて放れぬ汗のすえた臭いと口内を満たす鉄の味。
薄暗い室内に充満する男たちの殺意、嗜虐的な道具が並ぶ壁。
どれほどの時間、俺はこうしているのだろう。
腹を蹴られる度に胃液しか出さぬ嘔吐を繰り返し、爪を剥がされ蝋で焼かれ。
度重なる気絶と明り取りからの外光のなさに俺の思考は鈍っていく。
思いつく限りの罵詈雑言を浴びせられるのには、もう慣れた。
「さっさと吐け! 誰を調べていた? 組織の情報を話せ!」
お前はそれしか言えないのか?
その言葉を吐く体力さえ、俺には残っていない。
再生ばかりのボイスレコーダーは、俺の背に再び鞭を振るう。
飛び散る汗が弧を描き、また床を汚す。
二重三重に見える男たちに向かって笑ってみせる。
表情筋が引きつる、天井へ縛り上げられた両腕が無言の悲鳴をあげる。
首肯するように揺れる頭は、もう俺の支配権外だ。
「 」
聞こえたろう?ボイスレコーダー。
ちゃんと録音できたかな。
男が一人、椅子から立ち上がる。
やぁ、司祭様。これから始まるセレモニーの始まりだ。
他の男どもが、司祭様の進行を見守る。
胸に燦然と並ぶ星、小さな旗。上等な靴。右手に光るアーミーナイフ。
これでいい。
そっちのゲームオーバーさ。
一つ失うかわりに、一つ守れる。
お前たちはどうだ?
覚悟をきめろ。
明日は昨日、置いてきた。