夢と少女と旅日記 第7話-1
L.E.1012年 5月27日
あれから1週間。私たちは暴れまくりました。チームとして考えれば、1日にひとり以上の夢魔を倒したことになります。もちろん夢魔を挑発することも忘れていません。
「やーいやーい、ナイトメアのアホー!」
「えっ、挑発ってそういうのでいいんですか、ネルさん!?」なんてやり取りもしました。しかし、ドリームバスターズも夢魔も、特に変わった動きはありません。動かないのか動けないのか、それを判断するにも情報が足りません。
「ギルドに行っても特に変わった様子はありません」とサンデーさんも今日の朝会で言いました。それを聞きながら、私は喫茶店でみんなで注文したパフェを口に運びました。
「まだ1週間ですわ。こちらの動きに気付いてない可能性もありますわね。どちらかと言えば、まだ動く必要がないと判断されている可能性の方が高そうですけれど。
……それよりサンデーさん、口元にクリームがついていますわよ。ほら」
言いながら、ローラさんはティッシュでサンデーさんの口元を拭いました。それを見て、私はなんだか昔のことを思い出してしまいました。私もこんな時期があったなあって。
「なんだか親子みたいですね、ローラさん。これからお母さんって呼んでもいいですか?」
「む。失礼ですわね、ネルさん。それほど年は離れていませんわ」
「えー、でもギリギリあり得るんじゃないですか? 無茶苦茶若いときに産んだとしたら」
「……16ですわよ」
「何がですか?」
突然数字を言われて、私は聞き返してしまいました。いや、まさか、そんなはずは――。
「ですから、わたくしの年齢ですわ」
「はい? いや、またまたご冗談を。16って私より年下じゃないですか。少なくとも20代後半かと」
「あー、たんまたんま! それ以上はやばいって!」
ルビーさんが慌てて私を制止しました。はい? じゃあ、マジなんですか? だって、こんなにケバ……、大人っぽいのに16歳だなんて。
しかし、ローラさんの方を見ると、唇がわなわなとし始めていて、ようやく私は地雷を踏みしめたことに気付き、謝罪しました。まあ、多分許してくれたので、問題はないかと思いますが、これが今日一番の驚きでしたね。
お母さんの代わりになってくれないかっていう冗談も言いそびれてしまいました。ローラさんの横顔は本当にお母さんにそっくりなのに。私もお母さんに甘えたいのに。……なんちゃって。
作品名:夢と少女と旅日記 第7話-1 作家名:タチバナ