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みゅーずりん仮名
みゅーずりん仮名
novelistID. 53432
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『 あばたもえくぼ 』

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同僚に、変な奴がいる。
私は、彼のことが好きな時と嫌いな時があって、彼はそれを分かってくれない。
そんなに気にすることもないのに、ということばかり気にして、気にして欲しいことは気にしてくれない。
この間なんて突然、私の姿を見ると大急ぎでやって来て、聞いた。

「俺の傷、見える?」
何のことか分からなくて聞き返すと、陽の光にかざせば見えるだろ、とか必死になって窓際に誘う人で。
それが、訳ありの傷なんだろうな、と思うと、やっぱり引いてしまうから。
「3本、ここ」
と、彼は言い、私が見えないと分かると去って行った。

なんとなく恋の予感がしても始まらないのは、彼の分析癖のせいだと思い、私は憂鬱になった。
独身の男は気が利かないし、既婚の男は詰まらない。
とにかく私は、人生の終末論ばかり話す人や、検定話ばかりの人や、髪を切ったことを指摘するだけで素敵がってる人や、アヤシイ趣味っぽいアイドルオタクや、
政治と宗教との関わりがどうとかで世界が変わる話をしている人や、そんな男たちに囲まれて過ごしている。

あーあ。
運命とか言ったってね、本当に命の掛かった話にしかドキドキなんてなくてね。
私は、結婚相談所へ行って、その月にお見合いして一発で決めた。

結局、女は結婚相手で人生が決まるとかお祖母ちゃんが言ってたし、お金で生活は決まっちゃうし。
貯金はあまりないけど、将来、パートなんかで家計助けちゃうつもりだし。
結婚相手は、これから彼になる人だから。

きっと、痘痕も靨になる日が来るんじゃないかって、私は期待してる。
変な人生にはきっとならないし、まともな人生がやって来そうだ。

それから、ビルの屋上を見上げることも、手首の傷に目を凝らすこともない人生を知るんだろう。
私は、窓の外を見た。カラスが一羽、隣のビルの屋上から飛び立って行った。



~ 終わり ~