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超絶勇者ブレイブマン その21

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「お、お前がか? 何言ってんだ、クラスも学年も違うだろ」
「それはお兄ちゃんが悪いんだよ! ……まあ、そのおもちゃ壊しちゃったのは私の注意不足だけど」
 おもちゃとは少し響きが悪いなと希望は思ったが、おそらく夢には悪気はないのだろうと思って自重した。代わりに勇気が優しく語りかけた。
「えっと、星野さん、……って呼ぶのも変かな。落ち着いて順番に説明してもらえるかな、夢さん」
「さん付けなんてしなくてもいいですよ、先輩。えーっと、では順番に説明させていただきます。
 昨日の夜の話です。私は授業の準備をしているときにお母さんに晩御飯の手伝いをするように呼ばれました。そのとき教科書を自分の机に積んだまま放置しちゃったんです。
 それで、多分なんですけど、その間にお兄ちゃんが自分の準備をしようとして、それで間違えて私の教科書を自分の鞄に入れちゃったんじゃないかと思います。
 私はさっきの授業の前の休憩時間に教科書がないのに気付いて、お兄ちゃんが私の教科書を持ってないかと思って、この2年C組の教室に来たんですけど、誰もいなくて窓が開いていたので、そこから入り込んだんです。
 それで、お兄ちゃんの机を探してもなかったから、お兄ちゃんのロッカーを開けてみたら、急いで開けちゃったせいか、その勢いでそのおもちゃが床に落ちちゃって」
「教科書って、希望は夢、……ちゃんの教科書が自分の鞄に入ってるって気付かなかったのか?」
「どうせお兄ちゃんのことだから、そのまましまったままだったのか、机に出していたとしても、ろくに読みもしないで、また鞄にしまったんじゃないですか。それにしても、これだからお兄ちゃんと一緒の部屋は嫌なんですよね」
「ちなみに、なんの教科書だったの?」と愛が訊いた。
「数学です」
「あー、確かに数学の時間は居眠りしてたね、希望くん。まあ、夢ちゃんは気にしなくていいよ。希望くんが馬鹿なだけだし」
「いや、ほら、数学の教科書っていっぱいあるし、先月まで同じ教科書使ってたんだから、間違えても仕方ないだろ……?」
「そもそも学校にガンプラを持ってくるのが悪い!」
「お前だって喜んでただろ!」
 そのやり取りを見て、夢がくすりと笑う。今まで知らなかった兄の友人について、少しだけ知れて嬉しかったのかもしれない。
「それにしても皆さん、仲良いんですね。ふつつかな兄ですが、今後ともよろしくお願いします」
「お前も謝りに来たなら、もう少し申し訳なさそうに――。まあいい、確かに俺が悪かったみたいだしな」
 笑顔でお辞儀をする夢にそう言いながら、希望は正義に対して向き直り、真剣な顔をした。
「な、なんだよ。まだ何かあんのかよ」
「すまなかった! 全部俺の言いがかりだったみたいだ。本当に申し訳ない!」
 それは突然の土下座であった。クラスの女子もまだ何人か残っていて、しかも妹も見ている中で、それは屈辱的に違いなかった。だが、希望は頭は悪いが、芯の曲がった男ではなかったのだ。
「やめろよ、恥ずかしい奴だな。別に気にしてねえよ」
 正義にそう言われても、希望は何度も頭を下げて詫びを入れた。めんどくさいな、――というのが正直な感想であったが、同時に希望は意外と悪い奴ではないのかもしれないと正義は思った。
 この一件により、少なくとも一緒に昼飯を食うくらいならいいかと思えるようになったのだ。そして、ほんの少しだけ、明日からの学校生活が楽しみになってきた。その先、何が待ち受けているのか分からなくても。