アザレア少女
3.自己紹介
教室に戻り自己紹介というこれまた恒例行事を行う
正直私はこの恒例行事が好きじゃない
だって初対面ばかりの人の前で何を喋れと?
人見知りの人やあがり症の人へのある意味イジメだと思うよ、私は。
そりゃあ、最初が肝心だしお互い何も知らないけどさ?かといってクラスが静かな中一人だけ立って自己紹介するのは結構辛い
あれ、辛いと思っているのは私だけなのか?
……………まぁ、いいや。
取り敢えず今はその真っ最中な訳で、あろう事か次が私の番だ
そして現在の私の頭の中は真っ白だ、どうしよう
「これからよろしくお願いします!」
あ、やばい前の人終わっちゃった
なんでもっとあ行の人居ないの?
そんなことを考えながら、まずは立たなければ、そして自己紹介をしなければならない
私は考えがまだちゃんとまとまっていない頭で取り敢えず立った
前の黒板には必ずこれは言う!ということが書かれていた
1.名字名前
2.好きなもの(こと)
3.趣味
4.みんなへの一言
この四つを言ってしまえば良いのだ
何も深く考える必要はない、落ち着け落ち着け…………
「………っえ、と、薊桐朱理です。好きな事と趣味は一緒で、音楽を聴く事…………その、これからよろしくお願いします」
つっかえながらも言い終わり席に着く、そして他の人と同様拍手をみんながして、次の人にまわる
次の人が立つ音を聞き小さく安堵の溜息をつきながら強ばった体の力を抜いていく
椅子に体重を完全に預ければギィと軋む音を立てながら支えてくれる
良かった無事に終わった
取り敢えず初っ端から恥ずかしいヘマをしなくて本当に良かったと心から思っている
この後は少し先生の話を聞いて解散だ
すぐに帰れるから嬉しい限りだ
全員の自己紹介が終わり先生の話のキリがいいのだか悪いのだか分からない所で授業の終わりを告げるチャイムが鳴った
挨拶をし帰り支度を整えていると桜が寄ってきた
「朱理ちゃん!帰ろ!」
「うん」
「蘭ちゃんの所にも早く行こー!」
「分かったから、少し待ってってば」
「あ、あと春くんは遥希くんのところにいったよ」
「ん、分かった。それじゃあ行こっか」
「うん!」
蘭の教室に行くと蘭は二人の男子生徒と楽しそうに談笑していた
片方は元気一杯そうでスポーツが得意そうな子、もう一人は驚いたことに朝に目が合ったあの草食系男子くんだ
「蘭ちゃーん!かーえーろー!」
「あ、桜に朱理。わざわざ迎えに来てくれたの?」
「うん!」
「そっか、ありがとう」
「早いね、もう仲良くなったの?」
「うん、話していたら何だか話がとても合って」
「そっか、早くも出来て良かったよ」
「ありがとう、朱理」
蘭はふわりとその辺に花が咲いているような幻覚を見るほど綺麗に笑うと二人を私たちに紹介してくれた
「こちらが武島悠樹くん」
「よろしくな!」
「そしてこちらが朝比奈静汰くん」
「えっと、よろしくお願いします」
「うん!よろしくねっ、私は秋原桜!」
「私は薊桐朱理、よろしく」
「さて、と。お互いの紹介も終わったし帰りましょうか、下まで一緒に行きましょう?」
皆、思い思いの事を話しながら昇降口を目指す
趣味を聞いたり世間話したりと色々。
私は特に聞くことも無いので黙っていると予想外の所から話しかけられた
「……っあ、あの、薊桐さん」
「え。あ、何?」
「あ、えっと……、三人は幼馴染み、なの?」
「……うん、幼い頃からずっと一緒」
「そうなんだ、だからこんなにも仲が良いんだね」
「えっと……そう?」
「うん、傍から見ると凄く楽しそう。まだ会ったばかりなのにね」
何かごめんね、と苦笑気味に言ってきた
まずビックリした、まさか草食系男子くん、元言い朝比奈に話しかけられるなんて思ってもみかなったから
それに彼の目当ては蘭ではないのだろうか?
話さなくていいのだろうか?
それに傍から見るとそんなに仲が良いのだろうか
初対面の人が分かるくらいに。それって結構凄い事なんじゃないだろうか
驚きと少し照れるというか恥ずかしさが混じりあった感覚の中私は前を行く幼馴染み二人をボーッと眺めた
そして私は朝比奈にさっきと同じような質問と他何個か質問した
その問いかけに朝比奈は笑顔で答えてくれた
答えてくれる彼の瞳に曇はなくて、この人は嘘偽りなく答えてくれているというのがすぐ分かった
彼のような人が蘭と仲良くなってくれて良かったかもしれない
現に私は彼と話をしていて落ち着いてしまっている自分がいる事に驚いている
そしてあのもう一人の友人、武島と一緒に蘭を支えてくれそうだ
蘭は時々何でも背負って一人で頑張ってしまう所があるため幼馴染みでが一人も同じクラスに居ない状態は少しばかり不安だったので完全に安心していたとなれば嘘になる
だから、少なからず彼らが蘭と仲良くなってくれて感謝している
そんなことを思っていたら口が滑ったようで
「……………蘭と仲良くなってくれて、ありがと」
「……え。」
「蘭と仲良くなった人が二人で良かった」
「あ、……え、と…」
「……あの子のこと、よろしく」
「えっと、うん、あの薊桐、さん?」
「…………あ、」
目の前の彼は顔が赤く少し涙目になっていた
もう恥ずかしいからやめてくれと言わんばかりの表情だった
「ごめん、思ってるだけで言うつもりはなかったの、口が滑った」
「いや、あの、別に大丈夫……です…………」
「……………顔真っ赤だけどそんなに恥ずかしい?」
「っえ、あ、違っ!」
「大丈夫、このことは前の人達には黙っておくよ」
「〜〜〜〜〜っ!………薊桐さん意外とSなんだね」
ボソリと呟かれた言葉に私は聞こえぬ振りをしなに食わぬ顔で歩いた
桜に続くいじりがいがある人が出て来たな、これは
それにしても顔真っ赤でしまいには涙目にまでなるとは
…………………………結構可愛かった、かも。なんて
あれ、なんだろうこの感じ……?
胸の奥が何かムズムズする感じというか、何か、あたたかい感じだ