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超絶勇者ブレイブマン その20

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「さ、さあ、これで、もう分かったよね……」
「お前の足の速さとスタミナのなさは分かったけどよ」
「ち、違うよ! これは全力以上で走ったからであって、別にスタミナがないわけじゃ……」
 そう話してる内に呼吸は落ち着いたようで、確かにスタミナがないというのは言い過ぎかもしれなかった。しかし、だから一体なんだと言うのか。勇気が愛の代わりに説明しようとした。
「えっと、俺は愛ちゃんが何を言いたいのか分かる気がするよ。つまり愛ちゃんにも犯行が可能であった以上、正義だけを疑うのはおかしいってことだよね?
 それに、そもそもだけど、体育委員であるお前がちゃんと戸締りを確認していたら、こんなことにはならなかったんじゃないのか?」
 勇気は希望に問いかけた。愛はあえて争点にしなかったが、体育の授業の前に教室の戸締りをするのは男子の体育委員の役目だ。
 しかし、希望は確認を怠り、教室の窓は閉まっていなかったのだ。それは希望が教室の扉の鍵を開ける際に発覚していた。
「さあ、復唱要求だよ、希望くん! “佐藤愛には犯行は不可能だった”!
 赤字で言えなきゃチェックメイトだね。これでもう、せいぎくんだけを疑う道理は存在しない!」
「ぐ、ぐぬぬぬぬ……」
 もはや希望には反論の余地はなかった。だが、思わず閉口したのは希望だけではない。
 正義もまた圧倒されていたのだ。どこまで本気なのかどこまでふざけているのかも分からないのに、佐藤愛は只者ではないと思わされた。ただひたすらに前向きで、どんな絶望でも打ち払える少女、それが愛だ。
 そして、そのとき抱いた感情の正体に、正義はまだ気付かなかった。気付くよりも前に、ひとりの少女の声がして思考を遮られたのだ。
「あの、すみませーん。お取り込み中に申し訳ないんですけど」
 その声の主は教室の窓を挟んで、向こう側にいた。セーラー服のリボンが黄色なので下級生であることが推測できた。
 この年の学年色は1年生が黄色、2年生が赤、3年生が青なのである。これが来年になると1年ずつずれるので、1年生が青、2年生が黄色、3年生が赤ということになる。
 また、男子の場合、制服に違いはないが、ジャージはこれと同じルールで色分けされている。余談だが、黄色のジャージはダサいと言われ、自分の代が黄色でないことに胸を撫で下ろす生徒も少なくなかった。
「夢!? 一体いつからそこにいたんだ?」
 驚きの声を上げたのは、これまた希望であった。夢と呼ばれた少女は、下級生であるにもかかわらずタメ口で答えた。
「結構前からいたんだけど……、なんか皆さん、盛り上がってるみたいだったから、声をかけづらくて」
「なんだよ、次から次へと。一体誰なんだよ」と正義が呟いた。「なんだ、このちんちくりんは」と言いかけたが、さすがに2年生としては大人気ないかと思い、自重した。
「あ、まず自己紹介した方がいいですよね。私は希望お兄ちゃんの妹で、1年B組の星野夢(ほしのゆめ)って言います。
 それで、ちょっとお兄ちゃんに言わなきゃいけないことがあって……。その、ごめんなさい。それ、私……」
 夢は、壊れた状態のままで床に放置されたガンプラを指差して、申し訳なさそうに言った。つまり、自分が壊したと言っているのだ。それは先ほどの愛とは違い、正真正銘の真犯人による自白であった。